近年、世界的に人気を高めているのがSUVだ。昔ながらのジープ的な4輪駆動車の逞しさを残しながら、日常生活の中での利用も重視するクルマとして、日本でも見かける機会が多い。人気カテゴリーで車種も豊富だが、キャデラックの新車「XT5」も一度は試してみるべきクルマだと言える。
米ゼネラルモーターズ(GM)の高級車ブランドであるキャデラックから、新型のクロスオーバーSUVとして「XT5クロスオーバー」が2017年7月に日本初公開され、10月から販売が開始された。このクルマは、これまでの「SRX」の後継車になる。
XT5については試乗の感想も含めお伝えするとして、まずはSUVの歴史を振り返り、その文脈でXT5の立ち位置を考えてみたい。
走破性と街乗りの両立が魅力のSUV
SUVの発端は、英ランドローバー社の「レンジローバー」誕生に遡ることができる。レンジローバーは本格的な悪路走破性を備えながら、高級乗用車のような快適性を持つ車種として1970年に誕生した。当時からフルタイム4輪駆動方式を採用し、2輪駆動と4輪駆動の切り替えを必要とするパートタイム4輪駆動方式に比べ、日々の使い勝手を大幅に向上させていた。
日本車では、1981年にいすゞ自動車から「ロデオビッグホーン」が登場し、翌82年には三菱自動車工業から「パジェロ」が誕生した。これらは当時、レクリエーショナル・ビークル(RV)と呼ばれ、郊外へ休暇に出かけた際に悪路も走れる車種という位置づけだった。そして、キャンプやスキーが流行ったのである。
米国ではジープ「チェロキー」が1974年に生まれ、1984年からの2世代目が日本でも人気を呼んだ。
これらは当時まだ、SUVとはっきり区分けされてはいなかったが、それぞれの自動車メーカーには軍用や過酷な道なき大地を駆ける車種として、ランドローバー社には「ランドローバー」(のちに「ディフェンダー」)、三菱自にはジープのノックダウン生産による「三菱ジープ」、もちろん本家米国には軍用の「ジープ」があり、それぞれに悪路を走破するための高度な4輪駆動技術を持っていた。そうした本格派の派生としてSUVにつながる車種が登場したのである。