EVのデモも実施

十勝のデモでは、日立AMSがマツダ「デミオ」をベースに開発した電気自動車(EV)も見ることができた。日立AMSは自動運転時代にクルマの頭脳の役割を果たすであろう基幹部品も作っているし、EVを作る能力も持つ企業というわけだ。

日立AMSの製品・技術で構成したEVシステムを積んだデモ車両。2つのモーターで前後の車輪を独立に駆動させ、トルク配分を自在に制御する

クルマの知能化と電動化が2大トレンドとなりつつある自動車業界において、その両方を手掛ける日立AMSの存在感は今後、高まっていくかもしれない。クルマが変われば自動車業界の勢力図も変わるので、日立AMSもサプライヤーという立場から一歩を進められそうに思える。極端かもしれないが、日立AMSもクルマを作ってしまえば、業界におけるポジションは今と全く変わるはずだ。

こういう素人の考えに山足CTOは、「EVを作ろうと思えば作れるが、売れるEVを作るのは別の話」と釘を刺した。日本ではクルマをメーカーとサプライヤーの「擦り合わせ」で作り上げているというが、日立AMSが自動運転のEVを作る能力を獲得したとしても、やはり自動車メーカーには独自のノウハウがあり、そこに追いつくのは容易ではないし、その方向は目指さないというのが山足CTOの考えなのだろう。

日立AMSでCTO兼技術開発本部長を務める山足公也執行役(左)とクラリオンでCTO兼技術戦略本部長を務める國井伸恭執行役

日立AMSの売上高は2016年度実績で9,922億円。このうち、電動化・自動運転製品の比率は18%だった。同社では2020年度に売上高を1兆3,000億円に引き上げる計画で、電動化・自動運転製品の比率は26%へと高める方針だという。

クルマの電動化と自動化が、どのようなスピードで進展するかは誰にも分からないし、自動化に至っては、どこまで実現するかも不透明な状況ではある。しかし、日立AMSは電動化・自動運転に関連する製品を「成長ドライバー」に位置づけ、事業拡大を図っている。十勝で見た技術は将来、同社のコア事業に発展するのか、それとも一部が実用化するにとどまるのか。今後の進展を見ていきたい。