このように、意欲的なドラマ作りで注目された『シルバー仮面』だったが、裏番組に円谷プロ・フジテレビの『ミラーマン』がぶつかったこともあって、視聴率的に苦戦を強いられる。その結果、第11話より『シルバー仮面ジャイアント』とタイトルを改め、光子エネルギーを浴びたシルバー仮面が巨大化できる設定が作られる。地味な色合いだったシルバー仮面のカラーリングに「赤」が差し込まれて派手さを増し、数々の必殺武器、必殺光線を使ってヒーロー性を高める工夫がなされた。『ジャイアント』になったことで従来の巨大ヒーロー作品のテイストに近づいたものの、第11話から『怪奇大作戦』の牧史郎や『帰ってきたウルトラマン』坂田健などで特撮ファンに強烈な存在感を与えた個性派俳優・岸田森が津山博士としてレギュラー入りし、ドラマに重みをもたらす役割を果たしていた。26回にわたる珠玉のエピソード群は、放映終了から数十年の歳月を経て、ビデオソフトやLD(レーザーディスク)、DVD、Blu-rayといった各種映像商品となってよみがえり、多くの特撮ファンをうならせる70年代の傑作テレビ映画として伝説的に語り継がれるようになっていった。
一方の『スーパーロボット レッドバロン』は1973年7月から1974年3月まで、全39話を放映した連続テレビ映画で、宣弘社と日本テレビが制作を手がけた。世界各国から集められた巨大ロボットを展示する「万国ロボット博」の開催直前、潜入していたトロイホースによって日本のロボット開発者・紅健一郎博士や各国のロボットたちが奪われた。それは、ロボットたちを使って地球侵略を企む謎の組織「鉄面党」の仕業であった。健一郎の弟で、科学秘密捜査官SSIの隊員でもある紅健(くれない・けん)は、兄が設計・開発したレッドバロンの操縦者となり、鉄面党のデビラー総統が繰り出す数々の侵略作戦に立ち向かっていく。
レッドバロンのコックピットは目の奥にあり、最初に指紋を記憶した健以外の人間には操縦することができない。身長45m、重量150t、特殊合金バロンニウムで出来ているレッドバロンは両腕をミサイルのように発射する「バロンパンチ」、胸から繰り出す「バロンミサイル」、そして両耳から発する1億ボルトの熱線「エレクトリッガー」など、多彩な武器で戦うスーパーロボットだ。
鉄面党は各国のロボットを侵略兵器として強化改造しており、SSIの所持しているロボットを上回るスペックを有しているものも多い。レッドバロンはSSIや自転車刑事こと熊野刑事と協力し、鉄面党の魔手から地球を守るため奮闘するのである。
1971年に『シルバー仮面』、1972年に『アイアンキング』を作り出した宣弘社と日本現代企画(円谷プロから分かれた特撮スタッフによって設立された映像製作会社)のタッグによる第3の特撮テレビ映画である『レッドバロン』は、正義と悪の巨大ロボット同士が激しいバトルを繰り広げるアクション性の強いシリーズとなった。
制作陣がこだわり抜いたのは、何よりもレッドバロンをはじめとするロボットたちのメカニック描写である。バロンミサイルを発射するシーンでレッドバロンの両胸にある発射窓が開くと、その内側にミサイルの発射口が精密に作りこまれていたり、レッドバロンの右目の奥にあるコックピットから敵ロボットを確認するアングルが多用されていたりと、子どもたちの"メカへの憧れ"をストレートに映像化するかのような意欲的な画面作りが多く試みられているのが、本作の大きな見どころだといえるだろう。
もちろんロボットアクションに加え、前2作と同じく擬斗(アクション)を担当する若駒冒険グループ(殺陣師:高倉英二氏)によるスピーディな等身大アクションも、SSI隊員と鉄面党のメカロボ(兵士)とのバトルとしてふんだんに盛り込まれているのも見逃せない。中でもSSIの紅一点である松原真理(演:牧れい)が美しい容姿に似合わぬハードアクションを披露し、放映当時は大きな話題を集めた。牧れいは『レッドバロン』で一躍有名となり、以後もアクション派・美人女優として『コードナンバー108 7人のリブ』(1976年/宣弘社・関西テレビ)などに出演している。
映画『ブレイブストーム』は『シルバー仮面』と『レッドバロン』のキャラクターの名前や性格設定、劇中に登場する小道具などを一部受け継ぎつつ、両作の世界観を融合させるべくさまざまな仕掛けを施したシナリオ作りが試みられている。『シルバー仮面』の春日兄妹と、『レッドバロン』の紅健との間に、どのようなつながりがあるのだろうか。それはぜひ映画を実際にご覧になって確かめていただきたいところだ。
ただひとつ言えるのは、元の『シルバー仮面』『レッドバロン』をまったく観たことのない人でも十分に楽しめる、極上のエンタテインメントSFアクション映画に仕上がっているということ。その上で、オリジナル2作品を詳しく知っている人なら思わずうれしくなってしまうようなセリフやシチュエーションがところどころに挿入されているので、ぜひとも映画の隅々まで観て楽しんでほしい。