「ジュリア」から変わるクルマづくり
これには、アルファロメオという伝統の銘柄をいかに復活させるかについて、イタリア本社が動きだしたことが関わっていそうだ。新型ジュリアは、フィアットの部品を共有した前輪駆動方式を止め、後輪駆動のプラットフォームを開発し、採用した車両だ。
エンジンも独自に新開発し、これに8速オートマチックトランスミッション(自動変速機)が組み合わされる。その自動変速機は、前輪と後輪の重量配分を50:50に近づけるため、後輪を駆動するデファレンシャル近くに配置され、まるでスポーツカーのような搭載方法を用いている。例えば、最低でも1,000万円近い日産自動車「GT-R」が、この方式を採用している。
販売価格が446万円からという4ドアセダンのジュリアに、そうした特殊な変速機搭載方法を用いてまで、前後重量配分の最適化にこだわり、走行性能の高さを追求した新車開発を行ったことを考えると、新車発表会場での熱気も、さもありなんと思うのである。
アルファロメオ専売店設置は必然、気になる採算性は?
より大衆的なフィアットとは、採用技術を別にしつらえたアルファロメオの誕生には、販売する店もまた、別仕立てが必要になった。こう聞けば、専売店化の話も筋道が通ってくる。だが、まだ発売された新車はジュリアのみである。経営は成り立つのだろうか。牛久保氏は次のような手立てを語った。
「来年の早い時期には、ジュリアに加え『ステルヴィオ』も発売となることは、ジュリア発表会の場でCEOのポンタス・ヘグストロムが申し上げています。とはいえ、現状で新車が1台しかないところで経営が成り立つのかという点について、正直、私も厳しいと考えています。そこで、当初の44店舗の専売店については、ほとんどが既存のディーラー様にお声を掛けさせていただいています。そして、これまで販売されたアルファロメオ車のサービス売り上げで補完していただくように考えています」
点検や整備、あるいは修理といった納車後の維持のための売り上げは、無視しえない金額に達する。例えばフォルクスワーゲンは、初代「ビートル」を含め、長く乗ってもらうこともディーラーの売り上げに貢献していると話す。そのため、ことに欧州の自動車メーカーは、古いクルマの部品をなお供給し続けている。
サービス事業の売り上げを当てにすることにより、アルファロメオの専売店化を既存ディーラーから推進することは、無理のない筋書きなのだ。