新しい日常の形

さて、ここまでシェアサイクルの話を中心にしてきたが、興味深いのは、モバイクは単なるシェアサイクルの企業ではなく、テクノロジー企業であることだ。

テクノロジーによって、社会的課題の解決が行えるという考えを持つ会社だ。そしてシェアサイクルが日常に溶け込むことで、経済活動も変わりうる。モバイクが将来的に狙うのもその部分だ。具体的な仕組みまでは言及しないものの、木嵜氏は「(移動データに基づく)広告配信の最適化や民間企業や自治体向けに有用なデータを提供できる可能性がある」とする。

さらに誰もが利用する世の中になれば不動産の見方も変わる。駅徒歩15分の物件は、シェアサイクルで5分という表記になるかもしれない。それによって、不動産の価値も変わる。移動手段が変われば、人の行動が変わり、人通りが変われば、その道に並ぶ店舗も変わっていく。新たな生活インフラが新たな経済をつくり出していくことになるだろう。

こうした新しい世界が実現するには、大量のデータが必要となり、数多くのシェアサイクルが使われていることが前提となる。モバイクはまだ札幌市でのサービス展開しかしていないが、思い描く世界の実現に向け、どの都市でどのくらいの規模でサービスが始まるのか、次の一手が注目されるところだ。