モバイクが札幌の次に目指すエリア

モバイクの基本的な考え方は理解できたが、気になるのは、札幌市の次にどこでサービス展開を図っていくかだ。この点に関してはノーコメントとするものの、都心部に対して優先的に取り組んでいくとする。

都心部を選ぶのはビジネス的な側⾯を考えてのことだ。一般的な見解として、シェアバイク事業は、1台あたりの利用料が安く、より多くの自転車が1日に何度も利用されることで成り立つビジネスだ。都市部であるほど成立しやすい。逆に農村地域では成立しづらい。

都市部で成立しやすいとはいえ、多くの都市でコミュニティサイクルと称される事業は行われている。少し検索してみれば、意外なまでに様々な場所でサービス提供されていることがわかるはずだ。モバイクがエリア展開を図っていくなかで、ライバルがいないわけではない。既存の事業者がいる場所に割って入るような展開も考えられるのだ。

その点について木嵜氏は「サービスが1社しかないのは、競争がなく利便性が上がらない」と参入の余地があると見る。しかし「1都市に多数の事業者がいるような状況は線引きが必要になる。適切に管理運用できる事業者が複数社いるのは健全な状態だと思う」とする。

モバイクとしては、世界各国で事業を運営してきた経験、ハードとしての自転車、ソフトとしてのアプリ、行動指針としてのブランディングワードは大きな強みであり、多くの日本の都市に参入していける自信を持っているようだ。

とりわけ、ハード面では従来型シェアサイクル、いわゆるコミュニティサイクルの普及を妨げてきた課題を解消できる機構を持つことに強みがある。木嵜氏は、駐輪ポートへの投資が嵩んだことを従来型の問題だったと指摘する。自転車の貸し出し、ロック機構を駐輪ポートに備えなければならず、駐輪ポートに予算がかかり、自転車の台数、駐輪ポートが思うように増やせずにいたとする。

これを解消したのがモバイクだ。自転車側に貸し出しとロック機構を備えており、駐輪ポートの場所さえ確保できれば、従来比で低予算で利便性を向上させることが可能となっている。スマートフォンがあれば借りられるというメリットが利用者側にもあるわけだ。

実際問題としては、パートナーあって成り立つ事業であり、そう簡単に事は運ばない。自治体がどういった街づくりを望むのかが重要だ。その際に、モバイクが最適なのか否かといったことが判断が行われることになる。