EVとSUVは相性が悪い?
三菱自動車は、これまでエンジン車で培ってきた高度な技術を、EVに適用していくことで、走行性能をさらに進化させようとしている。その象徴が「e-EVOLUTION CONCEPT」だ。なおかつEVであれば、排ガスゼロ、すなわちゼロエミッション車両として環境に負荷を与えず、高性能な走りを手に入れられる。
しかし、三菱自動車と日産自動車の提携により、日産から三菱へと移って開発・品質担当の副社長に就任した山下光彦氏は、「当初は、SUVとEVの相性がいいとは思っていなかった」と吐露している。理由は、4輪駆動のSUVは、2輪駆動車に比べ4輪駆動化のための機能が追加されている分、車両重量が重く、それに対しEVは、バッテリー性能の課題として走行距離に制約があり、重いことは走行距離を短くしてしまう懸念があったためだ。
だが、日産の新型「リーフ」は、JC08モードで400キロの走行距離を実現するまでにバッテリー性能を進化させている。同時にまた、先に解説したように、三菱自動車が培ってきた4輪駆動の技術は、エンジンからモーターへ動力源が変わることで、より緻密に、あるいは繊細に制御することができ、走行性能を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。
日産との提携も活用、三菱自動車が目指す独特な立ち位置
「i-MiEV」が発売されて以降、三菱自動車は、電動化とSUVをメーカーの特色とした経営を続けてきた。そして、4ドアセダンなどの乗用車については、2016年に自主開発の取りやめを表明している。「プラウディア」(日産フーガ)や「ティグニティ」(日産シーマ)といった上級セダンでは日産からOEM(相手先ブランド名製造)供給を受けており、コンパクトミニバン「デリカD:2」はスズキ「ソリオ」のOEM供給だ。
SUVとEVに特化する戦略をとる三菱自動車。画像は同社が欧州、豪州、北米、日本など80カ国への展開を予定するコンパクトSUV「エクリプス クロス」の日本仕様だ。このクルマも東京モーターショーで見ることができる |
自社開発の独自車種はかなり絞り込んで経営をしてきたが、それをさらに推し進めることを「e-EVOLUTION CONCEPT」は表明している。さらに、自らも電動化技術は磨いてきたが、日産が知見を持つ世界で、最も安全なバッテリーを入手できる提携関係は、電動化を一層推し進める上で効果的だろう。
そこに、欧州や中国などからEV化の潮流がやってきた。「アウトランダーPHEV」は、SUVのプラグインハイブリッド車として今日なお、最多販売を誇っている。
EVとSUVに的を絞り込んだ三菱自動車の進路は、日産・ルノーとの提携を後ろ盾に、順風満帆に見える。