3つのモーターで進化する走行性能

そして、今年の東京モーターショーに現れたのが「e-EVOLUTION CONCEPT」である。これは、SUVに乗用車的な快適性を加味したクロスオーバー車である。そこにEVと、三菱自動車が伝統的に技術を磨き上げてきた4輪駆動の技術が組み合わされている。

「e-EVOLUTION CONCEPT」は電動化技術と4輪駆動の技術が融合したクルマ。奥に見える「Drive your Ambition」という言葉は、三菱自動車が新たに打ち出したブランドメッセージだ

モーターは前輪側に1つ、後輪側に2つあり、後輪については左右それぞれを個別に制御することができる。これによって、三菱自動車が「ランサーエボリューションⅣ(フォー)」から採用しはじめたAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)をモーターで実現する。

AYCとは何か

AYCとは、後輪左右の駆動力を個別に電子制御することにより、曲がる性能を一段と安定させることで高性能化しようとする技術である。

クルマはカーブを曲がる際に、4輪それぞれの回転数が異なる。理由は、タイヤの通る軌跡が4輪で異なり、それによって回転半径が違ってくるからだ。1台のクルマがカーブを曲がるとき、内側のタイヤはゆっくり回り、外側のタイヤは早く回る。こうしないと、滑らかに曲がることができない。

加えて、駆動力の配分を内輪と外輪に対し最適に電子制御することで、より速く曲がれるようになる。それがAYCだ。

AYCをモーターで実現する「e-EVOLUTION CONCEPT」

従来、この技術はエンジン車で採用されてきた。今回、これをモーターに採り入れることによって、よりきめ細かな駆動力制御ができるようになり、いかなる路面状況でもタイヤを空転させることなく前進させられるようになる。

なぜ、モーターではよりきめ細かい制御ができるかと言えば、電流を調節することで即座にモーターの回転を変えられるからである。エンジンの場合、運転者のアクセル操作に対し、燃料が噴射され、それが空気と共に圧縮され、そこに点火プラグで着火し、燃焼してはじめてピストンが押されて回転力になる。吸入・圧縮・膨張・排気という4つの行程を経てエンジンは力を出すが、モーターなら電流制御だけで力の加減を調節できる。