2017年10月9日(祝日・体育の日)、東急電鉄は、池上線に終日、無料で乗車できるというイベント「開通90周年記念イベント 10月9日池上線フリー乗車デー」を開催した。日常の利用客数が多い首都圏の大手私鉄で無料開放を行うということで注目を集め、当日の模様については多くの報道もなされた。

ここでは、地理的歴史的背景も含めて池上線が置かれている実情を探り、なぜ「無料乗車イベント」が実施されるに至ったのかを考察したい。

大いに賑わった池上線

10月9日イベント当日の蒲田駅。各列車の混雑も激しかった

池上線沿線を活性化させる「生活名所」プロジェクトの一環として、知名度が高くないこの路線を、沿線の隠れた名所とともに広く紹介。池上線の駅を最寄りとする各地域は、東急と連携した各種誘客イベントを行い、まずは池上線に乗って、魅力を知ってもらおうということが、このイベントの主旨であった。

目論見は当たり、当日の日中の各列車は大いに混雑した。ターミナル駅の五反田や蒲田では、断続的にホームへの入場が制限されたほど。戸越銀座商店街などは人波であふれ、かつての賑わいがよみがえった。

なお、利用の際には各駅で無料配布された「1日フリー乗車券」が必要であった。これは定期券サイズの紙のきっぷで、ICカード専用の自動改札機が通れず、改札口ではやや混乱が見られた。

だがそれは、恐らく承知の上。もちろん、自動改札機のスイッチを切って、自由に出入りしてもらった方が係員も利用客も便利だったことだろう。しかしそれよりも、乗車券を配布することにより、正確な利用客数を把握する方が重要であったのではないかと思われる。

左:買い物客や地域イベント参加者であふれた10月9日の戸越銀座商店街。昭和30年代ぐらいの賑わいがよみがえったという。右:随所に貼られていた「生活名所」のポスター