クルマは単なる移動手段か

ただし、自動運転技術に積極的だからといって、アウディがクルマを運転する楽しさを無視しているわけではない。自動運転の時代が到来しても「アウディはクルマを運転する行為の意味や楽しみを否定するものではなく、操る楽しさのあるスポーティーなクルマを作り続けるつもり」(斎藤社長)というのが同社の方針だ。ブースに展示されていた「Audi R8 Spyder V10」や「Audi Q8 sport concept」といったクルマからも、その考え方は感じ取れた。

ダイナミックで高効率な未来のSUVを具現化したコンセプトモデル「Audi Q8 sport concept」

一方で、スポーツカーのコンセプトを展示しているトヨタも、決して自動運転技術に消極的なわけではない。現にレクサスのブースでは、高速道路の入り口から出口までを自動走行するデモムービーと共に、コンセプトカー「LS+ Concept」がお披露目されていた。この技術は2020年までに実用化する方針だという。

レクサスのフラッグシップセダン「LS」の将来像を示唆するコンセプトカー「LS+ Concept」

ただ、「GR HV SPORTS concept」と「A8」で比べると、自動車での移動時間を楽しくしたいというメーカーの思いは共通しているのに、その方法が対照的なので興味深かった。トヨタが運転すること自体の楽しみを打ち出す一方で、アウディは運転時間を別のことに使える楽しみを訴えている。

自動運転の進化により、クルマは単なる移動手段としてコモディティ化していくのか、あるいは、運転すること自体が楽しいというような、何か特別な価値を持つ存在であり続けるのか。今年の東京モーターショーは、こんなテーマで見て廻るのも面白いかもしれない。