テレビも見られるアウディの自動運転

一方、今回の東京モーターショーで日本初公開となったアウディの新型「A8」は、自動運転技術で世界に先駆ける存在だ。このクルマには、市販モデルとしては世界初となる「自動運転レベル3」の機能が搭載となる。

その機能とは、新型A8が搭載する「Audi AIトラフィックジャムパイロット」だ。「中央分離帯のある比較的混雑した高速道路を時速60キロ以下で走行しているとき」に限って使用可能な機能で、起動すれば発進、加速、ステアリング、ブレーキの各操作をクルマに任せることができる。アウディによれば、その国の法律さえ許せばという条件つきだが、自動運転状態の車内では、車載テレビを見るような過ごし方も可能なのだという。

アウディの新型「A8」

システムによる運転代行で広がる可能性

東京モーターショーのプレスブリーフィングに登場したアウディジャパンの斎藤徹社長は、自動運転のレベリングは「あくまで技術的なカテゴリー分けであり、重要なのはユーザーにどういったメリットがあるか」だとした上で、アウディの自動運転に関する取り組みや考え方などを以下のように語った。

「忙しい現代人にとって、毎日の通勤、都市間の長距離移動は、退屈で無駄な時間と感じられるだろう。そうした状況で、自動運転システムが運転を代行すれば、そこで生まれた時間を仕事や同乗者との会話、あるいはリラックスすることなど、他の有意義な活動に使える」

「(A8にトラフィックジャムパイロットを搭載したのは)渋滞中の運転に費やす時間をユーザーに有効に使ってもらえると考えたから。アウディでは、これで(システムが運転を代行することで)生まれるエクストラな時間を『25時間目』と呼び、どのような過ごし方が可能で有意義か、研究を重ねてきた」

自動運転技術の普及はクルマでの移動時間を一変させる。アウディが東京モーターショーに展示しているコンセプトカー「エレーヌ」(Audi Elaine concept、画像)は、A8よりも高度な自動運転を実現するとうたう電気自動車(EV)だ

確かに、渋滞中の車内で過ごす時間は少し退屈だ。システムに運転を任せることで、ドライバーも映画を観るなどの過ごし方ができるようになれば、移動時間の楽しみは増えるに違いない。斎藤社長は、アウディが自動運転技術の普及に積極的な理由について、クルマの安全性が高まるのはもちろんのこと、「人間を単調で生産性の低い作業から解放し、より自由な時間を生み出していくというモビリティの新しい可能性を信じているから」だと説明した。