iPadのアプリは基本的には全画面で表示され、これが画面分割によって組み合わせられるようになった。
もちろんアプリは1つの目的だけで使うわけではないが、決まった作業をすぐに呼び出して再開できるiPadのマルチタスクメニューは、タスク=アプリではなくなり、これまでと異なる感覚だ。2つのアプリの組み合わせは、より具体的な「作業」、ワークフローを構成することになり、それを複数残すことができるiPadは、ワークフローを構成するマシンとしての存在感を増したと感じる。
画面分割しているアプリ間では、画像やテキスト、リンクなどをドラッグ&ドロップすることができ、キーボードとタップ作業を上手くブレンドさせた効率的に作業を進められる。別々の開発者が作ったアプリながら、これらを自由に組み合わせて「ワークフロー」をデザインするという意味で、iPadとiOS 11は、とても画期的な変化をもたらしてくれる、と評価できる。
画面分割を活用したアプリの組み合わせの活用が定着していくと、アプリ開発者は、他のアプリとどのように利用するのか、どんなワークフローを構成しうるのか、という視点がアプリに加わってくることになる。ワークフロー志向が強まったアプリが増えることは、iOS 11以降を搭載するiPadでの仕事の効率性を高め、結果的にiPadの競争力を高めていくことにつながっていく、と予測できよう。
インターフェイスの整理と効率化という、OSとしては非常に本質的な変化がもたらされたiPad向けiOSだが、結果的に、iPadそのものの存在価値をより高めて行くきっかけを与えることになった。AppleがiOS 11について「iPad史上最大のアップデート」という理由の一端を垣間見ることができるのだ。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura