モーションセンサー「TYPE-R」を手がけるLEOMO。従業員30人ほどの会社だが、取り巻きはすごい。孫正義氏の弟で実業家の孫泰蔵氏に加え、シャープ再生の鍵となったフォックスコンも関わる。そんな同社が最初に狙うのは自転車市場だ。わずかに記すだけでも、謎の多い企業LEOMO。一体、何者なのか。代表の加地邦彦氏に伺った話を3回に分けてお伝えする。

起業のいきさつを話すLEOMOの加地邦彦代表。開発したTYPE-Rにたどり着くには紆余曲折あった(撮影:磯崎威志)

孫兄弟との出会い

LEOMOの存在を知る人はそれほど多くないだろう。設立は2012年と社歴は浅く、今なおベンチャーの域を出ない。だが、同社の動きを探るとビッグネームが多数登場する。その謎を解くには、1994年まで話はさかのぼる。

まだwindows 95が国内販売される前のこと。当時、東京大学に在籍していた加地氏。所属していたサークルのメンバーに誘われ遊びに行った先にいたのが、同じ東京大学に通っていた孫泰蔵氏だった。加地氏は「遊びにいくとパソコンが何台もあって、LANでつないでオンラインゲームができるようになっていた。ヤフーがどうのこうのとか話していた」(以下、明記ない限り発言同氏)と振り返る。それが孫氏との出会いだ。

そこから親交が生まれる。「のちに、彼がインディゴという会社をつくるんですけど、2回目の会議を僕の自宅でやったくらいで……」。

孫氏と加地氏は大学卒業後、別々の道を歩む。孫氏は実業家の道を歩み、加地氏は、流体工学の知識を活かし、金融業界へ踏み込んだ。流体力学と金融はなんの脈絡もなさそうだが、流体工学のナビエ・ストークス方程式が金融デリバティブに利用されるブラック・ショールズ方程式と似ていたからだ。その知識を活かして、JPモルガンに入社した。ところが「面白くなくて、ネットバブル全盛期だったので、そっちにいこうと起業した」という。

それによって誕生したのがインベストリアだった。インベストリアはリアルタイム金融情報サービスを提供していた。まだスマートフォンが存在していなかった時代、「リアルタイムで金融情報が見られるよ」と孫泰蔵氏に声をかけ、PDA端末を渡していたという。その端末がさらなる未来を切り開いていった。「泰蔵さんが正義さんにそれを見せたらしいんですよね。そしたら、正義さんに"ちょっとおいで"と声をかけられた」。以後、一旦はソフトバンクグループに入ることとなり、後に独立、LEOMOを立ち上げることになる。