中国も覇権争いに参戦
自動車産業は裾野の広い産業構造を持ち、なおかつ昨今の電動化・知能化の方向による産業としての広がりが進んでいる。世界各国の経済における基幹産業としての位置づけはより高まり、先進国・新興国ともに自動車産業は国策につながる。
環境対策とも連動し、すでに電動化への国ごとのシフトが自国産業の競争力や育成の観点からも実態化している。今や年間2800万から3000万台市場が視野に入る世界の自動車大国となった中国は、2018年から「新エネルギー車(NEV)政策」を導入し、国内での販売・生産に占めるEV・PHVの比率を強制的に決めて順次、引き上げる方向である。
中国は、このNEV規制のもと、自国の自動車産業をEV覇権争いに加わるものとしたい国策を打ち出したと見る。中国事情通に言わせると「内燃機関(エンジン)の競争では勝てないが、EV転換でチャンス到来」だそうだ。
中国以上に自動車市場の今後の伸びが予想されるインドも、2030年までにガソリン車・ディーゼル車の国内販売を禁じ、自国で販売される自動車をEVのみに制限する方針を打ち出してきている。
欧州では、話題となったように英・仏政府が2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止することを表明。ドイツも2030年までに発火燃焼エンジンを禁止するという決議案を採択しているが、メルケル政権は連邦議会選挙を控え慎重な構えを示している。
米国では、すでにカリフォルニア州の「ゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)規制」があるが、2018年から強化され、他州にも波及している。
すでに自動車メーカーも、ボルボ・カーズが2019年から販売する全モデルを電動化すると発表すれば、ジャガー・ランドローバーも2020年以降発売の全モデルでの電動化を打ち出した。ボルボ・カーズは中国の浙江吉利控股集団(吉利自動車)、ジャガーはインドのタタ自動車が親会社であることからも、その意を受け早々とEVシフトを打ち出したことが窺える。
日産は矢継ぎ早の戦略、アライアンスで世界覇権獲得へ
いずれにしても電動化の行く先は、EVかFCVか予断は許されないが、「脱エンジン」に向かっていることは確か。その中で、EV転換の追い風が吹く中で覇権争いに日産が先陣を切ったのだ。
日産は、NECとの電池合弁開発会社を中国投資ファンドに売却する一方で、ルノー連合として中国でEVを開発する新会社設立を発表するなど、EV戦略を矢継ぎ早に打ち出している。三菱自動車もEV「アイ・ミーブ(i-MiEV)」での実績があり、ルノー日産・三菱連合でEV世界覇権獲得を狙う方向だ。
電動化は、一方の先進技術である自動運転との相性もよく、連動して進化の方向にある。だが、「内燃機関の終焉」と言う言葉で簡単に片付けられない事情もある。EV覇権争いは、今後2020年代半ばから2030年代に向けて熾烈な競争が展開されることになろう。