とはいえ、iPhone Xで搭載されるさまざまな新要素は本体価格の大幅引き上げにつながる。前回のレポートでも触れたが、OLEDのパネルモジュール単体で100ドルを超えるコストとなり、それに加えてイメージセンサーが従来製品と比較して1.5-2倍となるため、価格の大幅上昇は避けられない。最低でも1,000ドルを覚悟しなければならないだろう。
このため、iPhone Xは台数がそれほど出ない……おそらくはiPhone 7 Plusの出荷台数にも満たない水準になる可能性が高いと筆者は考えている。これにはいくつか理由がある。価格の高さもさることながら、「OLEDを含む部品の供給不足と製造の遅れで発売が大幅に後ろにずれ込む」「そもそも年内にそれほど台数が出てこない」ということで、「価格問題」と合わせ「商戦期を微妙に外す」「少ない製品の取り合い」という三重苦が待っており、Appleの業績にはそれほどプラスのインパクトを与えないのではと思われる。筆者の推測で、iPhone Xの今後半年での出荷台数は多くても1,500-2,000万台程度、発売日は10月末か11月ころを予想している。ホリデーシーズン商戦にはギリギリ間に合うが、少ない商品を取り合う構図は変わらず、比較的入手が容易になるのは年が明けて2018年春頃ではないだろうか。
ここで筆者からの進言だが、「新機能を使ったアプリの開発に必要」「どうしても最新のiPhoneを試したい」というユーザー以外にはiPhone Xはあまりお勧めできないと考えている。一方で、多くのユーザーには「最新の高速で快適なiPhoneがほしい」というニーズであり、新しくなったiPhone 8はその用途に最適だと考える。おそらく2017年モデルで販売される製品シェアの大半はiPhone 8とiPhone 8 Plusが占めることになるため、Appleの決算的にもiPhone XよりはiPhone 8のほうが重要なピースだ。もう1つ、これまでiPhoneで重要だった「売却時に高値で売れる」という要素は、iPhone Xには当てはまりにくいと予想している。当初は入手難易度から高値が維持されるが、長期的にみれば1,000ドルという価格は大幅に高く、値崩れの危険があることにも触れておきたい。