AMGは自動車業界のトレンドに対応できるか

しかし、今後も未来永劫AMGが成長していくのかと言われたら、個人的には断定しかねる。理由は現在の自動車業界を席巻している自動化や電動化の流れにどう対応していくかが課題になってくるからだ。

自動化については問題ないだろう。前述したようにAMGは、トランスミッションについてはライバルに先駆けて自動化を推進してきた立場なのだから。多くのユーザーはイージードライブの流れを肯定しているはずであり、メルセデスが考えている自動化の流れをAMGが取り込むことに違和感はないと考えている。つまり最大の問題は電動化ということになる。

電動化への対応が気になるAMG(画像は「GT C ロードスター」)

フランスやイギリスが2040年までにエンジン車の販売を禁止するという衝撃の発表があり、インドや中国も電動化推進のアナウンスを行っている。仏英中は現時点でAMGの販売成績を相応に記録している市場であり、インドでは今後の伸びが期待される。

筆者は電動化政策は都市と地方で分けて考えるべきという立場だが、新興国にとっては自国のベンチャーを育てるチャンスであり、イギリスには自国資本の量産車メーカーがなく、フランスは電力の多くを原子力発電所でまかなうという状況を見れば、戦略としての彼らの表明には納得できる部分もある。

高出力ガソリン車が魅力、電動化への答えは

ドイツや日本にとって自動車は基幹産業であり、その核であり続けてきたのがエンジンだった。だから両国のメーカーは、しばらくはエンジン開発も進めていくと思われるが、作っても売る場所が限られてしまっては旨味が少ないのも事実である。

1月に開催された北米国際自動車ショー(通称:デトロイトショー)でAMGは、F1エンジンを搭載したコンセプトカー「プロジェクトワン」を発表した。その一方で、メルセデスは来年から電動F1と言えるフォーミュラEへの参戦を明らかにしている。この分野でも電動化の流れがあることは、メルセデス自らが認めていることになる。

F1エンジンを積む“ハイパーカー”を発表しつつ、フォーミュラEへの参戦も表明しているメルセデス

高出力のガソリンエンジン車を魅力のひとつに掲げてきたAMGが、電動化の波にどう対峙するのか。興味を持って見守りたい。