では、今回選択された生活名所の候補を披露しよう。候補はナンバリングされているので、それにしたがって記載していく。
「No.001 目黒川」「No.002 TOCビル」「No.003 焼鳥エビス」「No.004 街のお助け隊 コンセルジュ」「No.005 沖田精米」「No.006 WAGASHI ASOBI」「No.007 洗足池公園」「No.008 雪見坂」「No.009 雪が谷検車区」「No.010 東調布公園」「No.011 山口文象自邸(CROSS CLUB)」「No.013 池上本門寺」「No.014 鈴木商店」「No.015 ユザワヤ」。
いかがだろう、このユニークなラインナップ。公園や本門寺は順当だと思うが、焼き鳥屋さんや和菓子屋さん、近代建築家の自邸(現在はサロンとして活用)、果ては高齢者の方々が街の手伝いをする取り組みまでも候補に挙がっている。No.014 鈴木商店にいたっては、タバコと切手、少年ジャンプだけしか扱わないという小さな個人商店。生活名所のパンフレットには“究極のセレクトショップ”というキャッチがついており、まさに“究極”ともいえる販売商品の“選択と集中”だが、“セレクトショップ”という呼び方がなんとも味わい深く、逆に興味がわく。
東急の案内で一部の生活名所を見学
そしてこの日、生活名所の一部を東急に案内してもらった。まず向かったのは池上本門寺。広大な境内には「大堂」「仁王門」「五重塔」などがあり、日蓮宗・大本山ならではの見応えだ。ただ、仁王門につながる階段ではジョギングをする人も多いらしく、地域住民と密着していることがうかがえる。
続いて向かった先は洗足池公園。公園入り口の至近に「鳳凰閣」(旧清明文庫)があり、整備して勝海舟記念館になる予定だ。洗足池公園は緑と水が豊かな公園。野鳥にはまったく詳しくないのでわからないが、水鳥……なのかな? が迎えてくれた。
次に訪れたのがWAGASHIYA ASOBI。ドライフルーツが詰まった羊羹とハーブのらくがんのみ扱う和菓子店だが、名門「虎屋」に勤めた職人が開いた店とあって、味は確か。ここのお菓子を地元の名物として自慢する人が増えているそうだ。
そして最後に焼鳥エビスを訪れた。店先で焼き上げる昔ながらのスタイルで、焼き鳥のタレの香ばしさが漂う。もし、筆者の通勤路にこの店があったなら、ついつい立ち寄ってしまいそうだと素直に思った。ちなみに“皮”とビールを注文し、お店の軒先で舌鼓を打った。
これらの生活名所は、有名な観光スポットがないからこそ発掘された“お宝”といってよいだろう。ほかの私鉄沿線ではまず名所と呼ばれない場所まで前面に押し出した池上線の取り組みは、はたして功を奏すだろうか。いや、個人的にはぜひ成功してほしいと思う。そしてローカルな雰囲気をますます感じられる、生活名所をぜひ増やしていただきたい。