ファーウェイの製品クオリティコントロール(Quality Control : QC)はどうなっているのか。馬兵氏(Ma Bing CChief Quality Officer)は、問題の背後には必ず別の問題があると、QCの鉄則を語る。他社の例を教訓にしつつ高度なQCに取り組みながらも、過去においてファーウェイでも問題が出たことがあると吐露する。

馬兵氏(Ma Bing CChief Quality Officer)

だが、その問題は製品が世に出る前に解決できたという。それはなぜか。企業理念が関係しているのだそうだ。ファーウェイはビジネスよりも安全を最優先に考えている。ここでいう安全というのは、人の健康であるとともに、もうひとつは、ユーザーの個人情報の保護でもある。

ファーウェイの製品はもっとも保守的な安全措置が施されているのではないかと馬兵氏はいう。今後、技術に大きな躍進がない限り、現時点では安全対策は万全にできるようになっている。だからこそ、保守的な考え方をすることは重要らしい。

ファーウェイはこの30年間、常に品質に関してのリスクに直面してきた。だが同社にはふたつの強みがある。ひとつは通信インフラを作ってきたことに基づくもので、高い信頼性を誇る。業界の中でもきわめて高い基準だという。

その高い基準を消費者向けの製品についても適用する。もちろん、そのままでは適用できないので消費者向け製品ではいろんなチャレンジに直面することになる。だから、部品のサプライヤーからファーウェイの品質基準は高すぎるといわれてしまうが、そこはそこ、根気よく説得して品質基準の遵守を認めてもらうようだ。

中国の会社が世界に向けて製品の品質がよいことを証明し認めてもらうためには、想像以上に多大な努力が必要だと同氏はいう。より高い基準を設け、それを遵守するしか高評価につなげる方法はないのだそうだ。

ファーウェイの通信インフラ機器

ファーウェイが持つもうひとつの強みは、ハンドセット事業を始めたときに通信事業者のためにデバイスを提供していた点だ。世界で100事業者に及ぶという。そのビジネスの中で各事業者と安全基準をすりあわせた経験があり、そのことが現在のビジネスに功を奏していると同氏はいう。

品質管理のためのいちばんの方法は基準を設けることだという。基準を設け、それを守っているからこそ自信を持って製品を提供できるのだと。

日本に出荷する製品も、世界に出荷する製品も同じ基準のもとに作られている。消費財は大量生産、そして自動化を行うことで同じ品質をキープできる。それを国によって異なる基準にすると管理リスクが大きくなってしまう。

ただし、日本については追加項目があるとも。外観、落下など気を使うようだ。理由は日本が求める品質基準が他国以上に高いからだそうだ。また、部品については複数ベンダーから供給を受けることでリスクを回避する。

ある都市の交通状況などを集中管理するコントロールセンターのデモ

消費者ニーズは今、技術面にとどまらなくなってきている。使用感を気にするユーザーが増えているのだそうだ。だからこそ、同社はたくさんのユーザーの声に耳を傾けてきた。今、1日に30万ユーザーの声がファーウェイに届く。そのビッグデータをもとに製品を改善している。

ファーウェイのスマホ開発期間は15カ月だという。品質管理で難しいのは部品の数の多さであり、そこが大きな課題となっている。部品ひとつにでも問題が起こるとスマホ全体が使えなくなるため、サプライヤーといっしょにがんばるしかない。

一次のみならず、二次、三次部品にいたるまで、たとえば部品に使われている接着剤といったものまでに注目し、600人の社員がサプライヤーに出向して管理しているという。

馬兵氏は音のよさで評判のスマホの経験談を持ち出した。その製品をある国に持っていったら音が小さいと言われたのだそうだ。なぜ、その国のユーザーからそういう意見が出たのか調査してみたところ、実は、その国の生活環境と関係があったことが判明する。他国以上に喧噪がガヤガヤしている環境だったのだ。だから製品は必ずしも世界で同一というわけにもいかないのが難しい。