今からちょうど30年前。1987年に中国・深センのビルの一室でスタートした通信機器ベンダー。それがファーウェイだ。3,500ドルの資本金で事業を始めた当時、44歳だった創業者の夢は、卓越した製品で世の中に認めてもらうこと。それは30年経っても変わらない。今も同じ夢を追いかけている。

中国・深センには、ファーウェイの巨大なキャンパスがある

そして、今、ファーウェイは世界170カ国以上でビジネスを推進する、18万人以上の従業員を持つ企業に育った。スマートフォンではサムスン、アップルを追う第3位のベンダーとなった。そして通信機器ベンダーとして、一般エンドユーザーの知らないところで社会のインフラを支えている。

世界はファーウェイをどう見ているか。徐翔宇氏(Xu XiangYu PR部門ディレクター)は、各国のメディアが、中国メーカーがアップルの市場占有率に影響を与えていることに言及し、テクノロジー系はもちろん、デザイン系ではニュースタンダードカラーに注目され、写真系では驚きのカメラ性能が取り上げられ、ファッション系ではかつてないボディの仕上げに、そしてアート系でもと、同社を取り巻く世界の目が変化しつつあることをアピールする。

徐翔宇氏(Xu XiangYu PR部門ディレクター)

ファーウェイはスマホマーケットで大きくなった。それに女性はかわいいものが好きだから、同社のマーケットシェアは伸びる一方で、サムスン、アップルは横ばいを続けている。だからこそ、今後も多くの消費者にベネフィットを提供していきたいと徐翔宇氏。

そのブランド戦略は差別化戦略の歴史だ。同氏は1990年代の東芝を欧米人は誰も発音できなかったと例に示す。トシバ、ツシバ、トッシーブ…。今のファーウェイは同じ状況にある。でも、すぐに読めるようになる。製品には自信があるからだと同氏はいう。

ファーウェイの社風的なものとしてinnovation HIVEがある。発信性、創造性の蜂の巣だ。ハチは集団で活動しているが、少なくとも全員が同じ目標に向かって行動している。ファーウェイにおいても全社員がそうしている。だから蜂の巣だというのだ。

innovation HIVE

さらに、ファーウェイはあくまでも通信の会社であって、通信テクノロジーに注力している。同氏は中国の「千年の四季」という八百年間、同じものを作り続けてきた話を例に出し、ファーウェイの方法論もそれだと言い切る。

ものを作るには、今、実現可能な最良のものを作ることと、今、ないものを作ることの二種類がある。一歩間違えばモノマネととられかねない姿勢だが、ファーウェイはどちらかというと前者だともいう。こうして同社は自らをブランディングし、世界への発信を続けている。

企業ストラクチャについては、親方日の丸的と集団コラボレーション的な二種類のストラクチャがあるが、ファーウェイは後者だ。

創始者は現在総裁として現役だが、控えめであまり企業を背負って前に立たない。その一方で、ファーウェイは6カ月ごとにCEOを交替する輪番制CEO制度をとっている。それで経営を常にフレッシュなものに保とうというわけだ。一人でやると企業は老化する。渡り鳥が飛ぶときに、どうしても先頭の一羽が風を受けることになる。だから交替するのだそうだ。

2017年8月の時点では、3人のトップが6カ月ごとにCEOを務める

一方、カネについてはどうか。ロングターンで投資していくのがファーウェイのやり方だ。同社は株を公開していない、上場していないため外部からの圧力もない。だから多くのカネを開発に使うことができる。毎年、売り上げの10%を投資に使い、99%の株は従業員に分配する。ファウンダーは株の1%を持つのみで、大きな借金もないという優良経営だ。

現在の同社、18万人の従業員のうち、4万人が各国のローカル社員として従事している。特定の事象に強い人材がどこにいるのかによって、開発拠点を置く国や都市を決めているという。日本については、アジアはもともと電子機器の部品に強いため、その方面をカバーする拠点を日本に作った。どこかの国に拠点を作り、そこに人を連れて行くわけではないというのが各国拠点展開の方法論だ。

ファーウェイは、毎年12月にブランド認知度を調査している。ずっと長い間、その認知度に大きな伸長はなかった。それには理由がある。同社が通信事業者を顧客として、そこに製品をODM供給することをビジネスの柱としていたからだ。黒子だったのだ。だが、ODMからOEMの企業に生まれ変わったとたん、その流れが変わった。結果としてグローバルでのシェアも向上し、ハイエンドスマホでは飛躍的な伸びを示せるようになった。

ファーウェイのブランド調査

スマホカメラでは、ライカとの協業も話題になった。ライカとは共に研究し、スマホ写真のスタンダードを変えたと自負している。

今後は、マシンラーニングの時代になり、近い将来、AIが暮らしの多くの場面で求められることを想定し、現在のR&Dではその方面に多くの投資をしている。ソフトだけではなくハードも研究しながら、他の業界とも協業して消費者に熱いメッセージを届けるべく企業努力を重ね続けるという。