Apple Watchはファッションアイテムからフィットネスアイテムへ

2015年、Appleは初代Apple Watchを発表。腕時計型端末市場に遅れる形で参入しました。市場ではスポーツ向けのカジュアルなデザインの製品が多かったなか、Apple Watchはファッション性を全面に押し出し、100万円以上するEditionモデルやApple Watch Hermèsモデルを展開。高級デパートに専門店をオープンするなど、高級ファッション路線を打ち出しました。

Apple Watch Hermèsモデル

しかし売れ行きは芳しくなく、2016年発売のApple Watch Series 2でスポーツ路線にシフトを始めます。水泳でも使える耐水性能や、iPhoneを持たずにランニングが可能となるGPS機能を搭載し、watchOS 3ではソーシャルフィットネス機能などアクティビティ関連を充実。CMでもフィットネス機能をアピールするようになりました。決定打はナイキとのコラボモデル「Apple Watch Nike+」がApple Watch Series 2とあわせて発表されたことでした。

Apple Watch Nike+モデル

ただ2016年時点ではファッション路線も並行していました。Hermèsモデルはストラップのラインアップを変えつつ引き続き販売していましたし、ホワイトセラミックケースの新たなEditionモデルも登場。昨年はAppleがフェードイン・フェードアウトでゆるやかに販売戦略を転換し始めた年でした。

2017年に入り、Appleはさらに高級ファッション色を弱めていきます。ロンドンとパリの高級百貨店にあったApple Watch専門店は閉鎖し、残るは日本のApple Watch at Isetan Shinjukuのみに。この流れを見ると、おそらく伊勢丹との契約は更新しないでしょう。

また高級ファッション路線の象徴だったHermèsモデルは、Apple Online Storeで「売り切れ」(販売終了)。現在店頭に並んでいるのはやはりApple Watch at Isetan Shinjukuのみとなりました。

一方で存在感が強まるNike。4月に限定バンドを組み合わせた「Apple Watch NikeLab」を発表し、Nike.com、NikeLabストア、Apple Watch at Isetan Shinjuku で限定販売しました。

Apple Watch Nike+の一部モデルはNikeのオンラインストアで「在庫なし」の状態に

8月にはApple Watch Nike+モデルが30%引きのセールとなり、一部モデルを除き完売。春に初代Apple Watch Editionが70%の大幅値引きセールを行っていることから、Apple Watch Nike+モデルも販売終了、もしくは次期モデルに備えて、売り切りを狙っている可能性が考えられます。

Apple Watchが本格的にスポーツ路線に進むと仮定すれば、Apple WatchにおけるNike勢の存在感は比例して増していくでしょう。IT業界No.1のAppleとスポーツ業界No.1のNikeが本格的に手を組めば、向かう所敵なし状態。Appleも、Nikeの持つ技術や人脈などは重宝するはずです。