最後に薮崎氏は、ITと家電の事業を通して抱えたさまざまなリソースが「次のエスキュービズムに繋がる」と話す。例えば物流や利益を生み出す事業構造が、AppleやAmazonといった企業と同様に"次の事業"を形作ると言うのだ。
「Amazonが好調な理由は、P/LやB/Sから見えてこないノウハウや人材、物流だと思うんです。物流拠点はもちろん、AWSに代表されるネットインフラ、一見して非効率な固定資産を多分に抱えている。でも、それらの資産、見えないものに対する投資がこの数年で大きな影響を与えています」(薮崎氏)
この話を引き合いに、現在のベンチャーブームが悪しき影響を与えているのではとも薮崎氏は話す。可能な限り固定資産を減らし、短期利益を追求してIPOでの利益確保を狙う。単なる批判ではなく、VCの投資構造が「IoT」というこれからの家電に繋がっていく分野に合わないのではないかという危惧だ。
「Amazonの規模になれるかという話はともかく、彼らは10年単位でこの取り組みを進めてきたわけです。私たちの家電も4年目で利益が出た。家電は、VCが入りにくいおかげでプレイヤーが少ないし、だから私たちがポジションを広げられる土壌があったと考えます。小売から流通、POSまで抱えていますから、自前でショッピングセンターまで作れる自負はあります」(薮崎氏)
最終的には、今すぐに事業をさまざまに勃興するというよりも、ITと家電、自動車という基幹事業をスケールし、その中で生まれた知見を"ごちゃ混ぜしたい"と話す薮崎氏。それは、日本版Amazonであり、IoT時代の先駆者になるための先鞭をつける施策でもあるようだ。
「今、家電メーカーにいる若手は本当に優秀だと思います。でも彼らは向こう3年の目標に捕らわれている。でも私たちは10年、20年というスパンで事業を考えたい。だからこそ、持っているリソースを柔軟に組み合わせて次に繋げるということが必要なんです。そういう人がいれば、面白いことができると思っているんですけどね(笑)」(薮崎氏)