「ゲームセンターと聞いて皆さんが思うのは、ボーリングなどと一緒に遊べる場所で、ワンコインで好きなゲームを簡単に遊べるというもの。人間のカテゴライズの認識力ってとてつもないもので、"ワンコイン体験"しかゲームセンターに求めなくなってしまうんですよね」(田宮氏)

ゲームセンターをワンコインの呪縛から解く。そのために、田宮氏と柳下氏が始めたのが「ゲームセンターの逆張り」だった。色んな効果音が鳴る、ガヤガヤしたゲームセンターではなく静かな場所を。気軽にふらっと立ち寄る場所ではなく予約制。ワンコインではなく1000円かかるゲーム。その代わり、ゲーム機が置かれているだけの無機質な空間ではなく、スタッフが誘導からHMDの装着まで、サポートするホスピタリティを重視した環境づくり。それがVR ZONEで目指したものだという。

「実はVR ZONEって、ゲームという単語を使っていません。スタッフに『ゲーム』『プレイ』といった使ってはいけない単語を指定して、"ゲーセン"と見えないように作り込んだんです。そのお陰で、オープン時に『新しいテーマパーク』というメディアの表現を目にすることが出来たと思っています」(田宮氏)

スキーロデオでは、乗る際にスタッフがさまざまなサポートを行う。機器が置いてあるだけのゲームセンターとは異なる体験価値を提供する

お台場で感じたキャラクターの"強さ"

VR ZONE SHINJUKUの前身、お台場で2016年4月~10月に開催していた「VR ZONE Project i Can in お台場ダイバーシティ」。ここで得たものは、VRコンテンツの方向性だった。

「お台場の様子を見て、新宿では『IP』、いわゆるキャラクターコラボのコンテンツを増やしました。そしてVRというHMDを着ける環境から、一人用コンテンツがメインだったんですが、多人数で楽しめるものを増やしました。キャラクターについては、最初はゼロでスタートしたんですが、会社に『VRはパワーがある』と言うために、敢えて外したんです(笑)。でも実際、いわゆる"ガジェッター"だけでなく、カップルやグループでいらっしゃるお客さんを多く目にして可能性が広がったなと手応えを感じました」(田宮氏)

その後、ガンダムやボトムズといったキャラクターコンテンツを投入。すると、20代前半の利用者が突出していた年齢分布の山が、30代、40代も来場するようになり「山が平滑化しました。誰もが関心を寄せる、IPの強みを改めて実感しましたね」(田宮氏)。お台場も新宿も"お一人様"に向いている場所とはいえない。だからこそ、カップルやグループといったみんなが理解あるキャラクター、そしてみんなで楽しめるコンテンツを提供することで、さらにVRへの理解を深めてもらえるようにした。

幅広い年代層の取り込みに貢献したボトムズとガンダム

「『さあ、取り乱せ。』というキャッチフレーズがあるんですが、お台場などの経験から研ぎ澄ましたラインナップになっているという自負があります(笑)。例えば、車のドライブや電車の運転なんかはVRと親和性が高いように思えます。しかし、それでは一人で楽しめるだけでみんなで楽しめず、お台場での稼働率があまり良くなかった。VRじゃなくてはダメ、みんなでワイワイできる遊びを提供しなければと感じました」(田宮氏)

「VRは直感的に操作できることが一番大切なポイントです。一般的なアーケードゲームは、習熟度が求められるコアなファンに受け入れられるコンテンツ作りが一つの鍵でした。ですが、VR ZONEでは友だちと遊ぶ体験にフォーカス、それが根底にあります。マリオカートなんかは、想像以上に皆さんが絶叫していますし(笑)、エヴァでは3人1チームの構成なのに、カップルで来られて1つシートが空いてしまうこともありますが(笑)、そういった体験を皆さんがSNSで拡散してくれているのはとても嬉しいですね」(柳下氏)

ドラゴンボールやマリオカートなど、国民的人気を誇るコンテンツは、集客力に大きな影響を与える