アプライアンスについてもセグメント全体は好調だが……

梅田氏は、「北米における顧客の新規出店ペースが鈍化し、ショーケースなどの需要が低迷しているのが原因」と説明するが、この背景にあるのはeコマースの成長だ。「ハスマンのビジネスの中心は新規オープンする小売店舗。ただ、eコマース事業者が新鮮な食材を取り扱うケースが増えており、小売店の新規開設が落ちている。これが需要減少の背景にある」という。これも冷凍ショーケースの競合他社との戦いではなく、競争軸が異なる企業との戦いが始まっている市場のひとつだ。

米国市場をターゲットにしてきたハスマンはスーパーなどに納入する大型冷蔵ショーケースが中心。ただし今後は、パナソニックが得意とするコンビニエンスストアなどの小規模店舗向けの品揃えを強化することで、米国市場での事業成長を見込むという。

想定外の敵が成長を促すか

しかし、これらの戦略だけでは「競争軸が異なる企業との戦いを視野に入れた一手」とは言い難い。

パナソニックは、電機業界のトップアナリストである片山 栄一氏や、日本マイクロソフト会長だった樋口 泰行氏、SAPジャパンバイスプレジデントの馬場 渉氏といった「外の血」を積極的に導入しはじめた。それによって社内の意識を変え、スピード感を持った経営に取り組みはじめている。

2018年に創業100周年を迎え、社員数で約26万人を抱えるパナソニックが社内意識を一瞬にして変えることは難しい。成長領域に位置づけた事業で、競争軸の変化に対する有効な手を打てないままでは、今後の成長戦略に不安が残る。アビオニクスおよびハスマンに共通しているのは、北米に本社機能が残っている点。つまり、「門真文化」と言われる日本のパナソニックの外にある組織である。

ただし発想を変えてみれば、大胆な「転地」ができる事業体とも言える。想定していなかった外敵から攻め込まれつつある領域だからこそ、大きく物事の在り方を転換することで攻めの一手を打つ。アビオニクスとハスマンは、そうした手を打つべき環境に置かれているともいえる。

もし、ここで、競争軸が異なる企業に対抗する一手が打てるのならば、我々は、パナソニックの新たな姿を見ることになるのかもしれない。