また、EMS事業の立ち上げについては、「第2のコア事業と位置づけて、2015年にスタートしたEMS事業は、よくぞここまで立ち上がったな、という実績。2016度には収支トントンとなった。PC事業だけでは利益があがらないが、新たな事業に収入がつき、固定費が軽くなり、利益があがっている。2016年度の営業利益のほとんどはPC事業から出た」とした。
「EMS事業は、VAIOが黒子になることを前提として立ち上げた事業。今は製品を出すときに、VAIOの名前を出してもいい、あるいは出したいという要望があり、カタログや宣伝にVAIOの名前を使っている。これは通常のEMS事業では考えられないことであり、VAIOらしいEMSによるモノづくりが評価されている。VAIOがパートナーとして認めていただいている証だ。これをベースに、次の展開が可能であり、付加価値サービスにも踏み出せる」(吉田氏)。
VAIOのEMS事業の例。左から順に、講談社と手塚プロダクション、NTTドコモ、富士ソフトのATOMプロジェクト第1弾「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」、富士ソフトのコミュニケーションロボット「Palmi」、AKA LLCの英語学習AIをロボット「Musio」。いずれもVAIOは主として製造を担当している |
VAIOをもっと筋肉質に、今後3年間で「ブランド価値を高める」
だが、吉田社長は、これまでの3年間を「ようやく標準体重になったところ」と評価。「これから筋肉質な体質にしたいと考えている。3期連続最終黒字、2期連続の営業黒字によって、構造改革のフェーズワンは終わった。今後3~5年を、フェーズ2として成長戦略を進めるのが私の役割である」とし、「今後3年間で目指すのは、VAIOのブランド価値を高めることに尽きる」とした。
前任の大田義実前社長(VAIO取締役に就任)は、課題となっていたVAIOの経営効率化と安定化とともに、新規事業(EMS事業)の立ち上げを行い、2015年度には営業黒字化を達成。2016年度も大幅増益を達成し、成果をあげたと、2016年6月に出された新社長就任のプレスリリースで説明していた。
PC事業だけで今後5年は生きていけない
社長交代は、これまでエレクトロニクス業界での経験がなかった大田前社長に代わり、長期的視野での会社の継続的な成長の実現を図ることを目的に、エレクトロニクス業界に長く経験を持つ吉田新社長のもとで、事業拡大を目指す狙いがあるとしている。
吉田社長は、「VAIOのブランド価値を高めるためには、次の一手を打てるために、安定した高収益企業であること、自分の特長を生かすことができる『特異な技術』を、少数精鋭の高効率経営のための、リソースを『フル回転』で使い切ることが大切。そして、ハードだけに依存しないことが重要である。PC事業だけで、今後5年は生きていけない。5年後もPCのVAIOであることには変わりはないが、環境変化にあわせて変わっていくことが大切である」と述べた。