Yahoo!のゲームプラスの登場と、その直後のAdobeによるFlash終焉の2つのニュースは、筆者にとって、非常に高い関連性を持って受け止めることになった。それは、通信速度の向上、そもそものスマホの処理性能の向上、そしてウェブ標準技術の充実によって、これまでFlashで実現していたようなゲームをFlashなしで制作できるようになった、ということを意味する。

このことは、Jobs氏が2010年に指摘していた、Flashなしのモバイルウェブの世界が実現したことを示している。と同時に、Jobs氏の本音とも言える6点目のApp Store外のアプリの排除は、Flashを追いやったウェブ標準技術の発達によって、奇しくも実現されなくなってしまった。ウェブ標準技術を高速に、効率的に動作させることを目指したモバイルウェブブラウザ(Safari)のために開発されたブラウザゲームは、Flashとは異なり、Appleが論理的に排除できない存在なのだ。

AppleやGoogleが要するアプリプラットホームが、2010年当時のFlashのような存在にならないためにどうすればよいか、Appleは考えなければならない。それがARなのか、VRなのか、機械学習を生かした処理なのか、あるいはより高度なコミュニケーション技術の実現なのか、BluetoothやNFCによる外部連携なのか……。いずれにしても、ウェブ標準とアプリプラットホームにおける、健全な競争によって、双方の技術がより発展していくことが期待される。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura