気になる日本への影響
VWのDE車排ガス不正が、ダイムラーやフィアットなどの欧州メーカーに疑惑の連鎖を起こす中、気になるのは日本への影響だ。
日本の輸入車市場で見ると、VWは排ガス不正の影響で2015年~2016年の販売が1~2割減少した。それまで輸入車市場のトップを走っていたVWだが、首位をベンツに譲って陥落した。VWは日本でDE車を輸入していない。日本のユーザー心理に対し、排ガス不正によるブランド失墜の影響は大きいと言えよう。
一方、日本の輸入車市場でVWに代わってトップを走るダイムラーのベンツだが、今回のリコールの影響として、不正が事実ならば好調な販売にブレーキがかかる恐れがある。
またFCAも、フィアットのDE排ガス不正疑惑により、日本での「ジープ」ブランドのSUVで同様の懸念がある。特にFCAは、米クライスラー車の日本における販売が低迷しており、ジープが唯一の売れ筋であるだけに気がかりなところだ。
マツダのクリーンディーゼルに対する評価は上昇中
日本車サイドでは、スズキがフィアットからDEの供給を受け、ハンガリー拠点で生産し、欧州市場で販売してきた。これまで、スズキ車は欧州でも好評に受け止められてきただけに、今回のオランダ当局によるスズキ車のDE排ガス疑惑には当惑している。
スズキはVWと資本提携していたが、“離婚”の原因はフィアットからのDE供給契約だった。VWのDEをスズキ車に搭載していなかったことで、結果的に助かった形になったことから、VWとの提携解消を「運が良かった」(鈴木修会長)としていたスズキだが、フィアットの排ガス不正疑惑に飛び火したことは青天の霹靂だったようだ。
一方で、欧州メーカーのDE排ガス不正疑惑の連鎖に対して、クリーンディーゼルとしての評価を高めているのがマツダである。マツダの「スカイアクティブ技術(SKYACTIV TECHNOLOGY)」によるクリーンディーゼルは、日米欧の厳しい排ガス規制をしっかりとクリアしており、日本でもマツダ車販売の4~5割を占めてきている。
ダイムラーDE車の欧州における300万台超のリコールは、まだ真相が明らかになっておらず、不正疑惑の中での自主措置とされる。それだけに、真相究明と今後の対応次第で、日本を含め世界に波及していくことにもなる。