欧州では伝統的に人気だったディーゼル車
そもそもDE車は、ガソリン車に比べパワフルで加速がよいという特性を持つ。また、燃料の軽油はガソリンより安く、燃費も2~3割方よく、CO2排出量も少ない。しかし、NOxとPM(粒子状物質)という大気汚染物質を排出する問題点がある。かつて日本でも、東京都知事時代の石原慎太郎氏がすすの入ったペットボトルを掲げ、DE車の排気問題が話題になったこともあった。
それでも、欧州ではDE車は伝統的に人気があり、欧州の乗用車市場でDE車は50%以上のシェアを持つ。これは、欧州では長距離移動が多く、燃料価格が高いことに加えて、MT(マニュアル・ミッション)車が主体であるため、ガソリン車よりDE車にメリットがあることが背景となっている。
しかし、VWのDE車排ガス規制不正問題が2015年に発覚し、結果的にVWがこれを認め、VWの排ガス不正DE車が1100万台に拡大したことを契機とし、欧州でのDE車人気も停滞気味となった。これに今回のダイムラーやFCAの疑惑も連鎖して、一気にDE車市場が縮小することにもなりそうだ。
欧州各国政府がEVシフトへの旗幟を鮮明に
さらに追い打ちをかけるのが、欧州各国政府の動向だ。フランス政府は先頃、2040年までに国内のガソリン車とDE車の販売を禁止とする方針を発表。欧州でのDE車離れは避けられそうにない。
一方で、欧州メーカーの間では電気自動車(EV)開発が加速している。VWはDE車排ガス不正問題を受けて、EV転換を急ぐ方針を掲げている。ルノーやプジョー・シトロエン・グループ(PSA)も、フランス政府の方針に沿ってEV化を進める。
スウェーデンのボルボ・カーは2019年以降、ガソリン車とDE車の内燃機関から、ハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、EVに車種を切り替えていくという思い切った発表もしている。
これまでDE車人気が高かった欧州乗用車市場が、今回のDE車排ガス問題で大転換を果たすことにもなりそうだ。