ハンドル操作の過剰は車酔いにつながる

自動車ジャーナリストは全般に一般の消費者に比べ運転に長け、また様々なクルマに乗る機会が多いので、試乗の評価は辛口になりがちだ。それは、技術評論として間違いではない。だが、消費者にとっての利点はどうかという視点では、セレナのプロパイロットも大いに評価されるべき性能であったのだ。

ミニバンの「セレナ」(画像)で「プロパイロット」を始めて導入し、SUVへと同技術を展開した日産

私の見るところ、一般的に多くの運転者は、運転中の視線が近く、たいてい目の前を走るクルマの様子を見ている。だが、本来は目の前のクルマを視界に入れながらも、2~3台前のクルマの様子や、その先の道の行方を見ているべきである。

それができず、目の前のクルマに注目しすぎるあまり、カーブではハンドルの切り遅れが生じ、切り遅れるので急ハンドルになり、急ハンドルになるので切り込みすぎてしまうことが多く、それを修正するためハンドルを切り戻す操作が入る。クルマが惰行すると言うほど大げさではないが、小さく惰行した状態が続くので、運転者はともかくも、同乗者は車酔いを起こしやすくなる。

プロパイロットのハンドル操作で同乗者も安心?

プロパイロットを利用すると、フロントウィンドウの上端に設定されたカメラで前方を見ながら、車線の真ん中を維持するようハンドルが自動調整されるので、曲がっていく車線の通りにハンドルが切り込まれる。つまり、ハンドルの切り遅れも、切り込みすぎも、切り戻しもない。小刻みな惰行をしなくなるので、同乗者は快適かつ安心して座席に身を任せることができ、車酔いもしにくくなる。

エクストレイルとプロパイロットの相性は

とくに、3列シートのミニバンでは、3列目の座席が後輪の後ろ側に位置するため、例えばバスの一番後ろの席に座ったように、体が余計に揺すられて車酔いしやすくなる。そのうえ、運転する人のハンドル操作の、切り遅れ、切り込みすぎ、切り戻しによる小刻みな惰行が加われば、車酔いするのは当たり前だ。プロパイロットなら、それがなくなるというわけだ。

日産が、車酔いしやすい座席のあるミニバンで最初にプロパイロットを設定したことの見識の深さに感銘したものである。結果、セレナ販売台数の7割近くの顧客がプロパイロットを注文しているという。消費者も、よくわかっている。

エクストレイルでは、それでもセレナで気になった点が改善されていると感じた。たとえば、車線の真ん中を維持しながら走行を続けるためハンドルを自動操作する際、ハンドルを小刻みに左右へ修正する様がセレナでは違和感を覚えさせた。その小刻みな動きがエクストレイルではなくなっている。

また、車線の真ん中を維持するとはいえ、セレナの場合はやや左に寄っているように運転席からは見え、路肩に寄りすぎてしまわないか気掛かりであった。これも、エクストレイルでは、運転席から見てまさに車線の真ん中を走り続けるような認識ができるようになった。