なりふり構わない低価格と4年縛り

前述のように、最も安いプランでの1,980円という利用料金は、NTTドコモが6月に導入した、特定の2機種に限定して月額1,500円引きになる「ドコモウィズ」よりも安く、KDDI傘下のUQコミュニケーションズのMVNOサービス「UQモバイル」の「プランS」と同等になる(UQのほうがパケット量が2GBと多い)。

事実上、子会社との食い合いも辞さないという、かなり強硬な価格設定だ。UQモバイルが企画的順調にシェアを伸ばしつつあるなか、なぜ彼らにも影響の出るような施策をとったのだろうか。

今回の発表に際し、実はもう一つのプログラムが発表されている。それが「アップグレードプログラムEX」だ。これはAndroid端末の購入時に、月額390円のプログラム料金を24回払い続けることで、端末の割賦回数を従来の24回から48回に拡張して1カ月あたりの支払い料金を下げるとともに、25カ月以降は未払分が残っていてもその残額を支払うことなく機種変更可能にする、というもの。既存の「アップグレードプログラム」が月額300円で24回割賦中12回の支払いで残額の最大7カ月ぶんが無償になるのと比べると、支払額が3割アップする代わりに値引率は約40%向上と、割のいいサービスに見える。

48回払いというのはスマートフォンの製品寿命を考えるとかなり異常な長さ。機種変すれば実質半分になるので、あくまで機種変を前提とした割引サービスと考えればいいだろう

総務省のワーキンググループが発表したガイドラインにより、キャリアは多額の端末の購入補助をつけることができなくなり、いわゆる0円端末が販売できなくなった。これにより高額なハイエンド端末が売れなくなり、さらに格安スマホブームでMVNO+低価格なSIMフリー端末へと流れるユーザーも増えている。しかしキャリアとしては、最新設備の性能をフルに使え、電波の利用効率の高い最新の高性能端末を普及させたいはずだ。

たとえば各社今も3G接続の端末が残っているが、これを全廃してLTEに切り替えられれば、さらに20~40MHzの帯域を確保できるし、MU-MIMOなど最新の技術に対応した端末なら、より電波利用効率は高くなる。数年後に控えた5Gを見据えても、高額端末への障壁はなるべく下げておきたいはず。そこで月々の支払い額は支払回数を増やすことで見かけ上の負担を減らし、月々の支払い+機種変更時の端末回収という条件付きではあるものの、高額な端末を実質半額で販売するプログラムを用意したのだろう。

一見お得そうな「アップグレードプログラムEX」ではあるが、前述したように割賦回数は48回、つまり4年縛りという前代未聞のプランでもある。プラン限定とはいえ、利用料金を減らし、端末料金の約半額を補助してでも、従来の2倍の期間を自社に囲えるほうが有意義だと判断したのだろう。

実は今回の新料金プラン2種類では、従来の「マンスリーポイント」が「au STARロイヤル」に統合されている。au STARロイヤルでは、4年目まで毎月1,000円ごとに10ポイント、5~7年目で20ポイント、8~10年目で30ポイント……と、長期利用者になるほどWALLETポイントの付与率が向上する。しょっちゅうMNPするようなユーザーはこうしたポイントの向上前に乗り換えてしまうが、「アップグレードプログラムEX」に加入していれば、最初の4年を超えて2倍のポイント付与率になるところまでユーザーの多くをつなぎとめておける。

ちなみに最初の4年間で貯められるWALLETポイントは、「auピタットプラン」の最安時の場合でも(20×12)+(30×36)=1320ポイント、「auフラットプラン20(シンプル)」の場合で(40×12)+(50×36)=2280ポイントだ。これが次の年から2倍になると思えば、もう少し居残ろうか、と思うユーザーも増えるだろう。つまり、WALLETポイントも含めて長期にユーザーを囲い込むための方策が、今回の2つの料金プランの狙いだというのが、筆者の見方だ。