出資による緩いつながりでICTの大きな事業共同体を作り上げる
そして現在ソフトバンクグループが力を入れているのが、IoTのほかにAIとロボットになる。確かにこれまで同社は、AIに関してはIBMの「Watson」、ロボットに関してはソフトバンクロボティクスの「Pepper」を展開するなどして力を入れてきた。
だがARMの買収によってソフトだけでなく、ハード面でもAIに向けた備えを強化してきたほか、ロボットに関しても、6月にロボットの研究開発を手掛けるボストン・ダイナミクスをグーグルの親会社であるアルファベットから買収するなどして、事業強化を進めている。それ以外にも、ソフトバンクグループは低軌道の衛星を用いて世界的にインターネットが利用できる環境を構築する、米OneWebなどの先端企業に相次いで投資を進めているようだ。
そして同社の企業投資で特徴的なのが、ARMを除けば直接ソフトバンクグループが経営に参画するのではなく、投資はするものの既存の経営者の自主性を維持する方針を打ち出していることだ。これにはソフトバンクグループが、出資企業同士の緩いつながりによって共同体を作り上げようとしているが故である。
ソフトバンクグループはかねてより「情報革命で人々を幸せに」というビジョンを掲げているが、その情報革命を起こし続ける上でも先端技術の開発に取り組み、事業を継続する必要がある。そのため同社は10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立し、ファンドを通じて先端技術を持つ会社への投資を拡大。緩いつながりによる企業連合を作り上げることで、リスクを分散化し長期的に会社が存続できる体制を作り上げようとしているわけだ。
それゆえソフトバンクグループは、インターネットや通信事業にとどまらず、投資によってロボットやAIなどより新しい分野の市場開拓も進め、ICT分野に特化しながらも多角的な分野を手掛ける、ある種のコングロマリットに近い業態を目指していくものと考えられる。ファンドという武器を手に入れ、巨額出資で経営が傾く危険性が減ったことから、同社は今後一層、幅広い事業への出資によって事業範囲の拡大にまい進すると考えられそうだ。