成長鈍化のスマートフォンからARM買収で次の分野を目指す

そのことを象徴しているのが、英国の半導体設計大手のARMを昨年3.3兆円もかけて買収したことだ。ARMは低消費電力ながら高いパフォーマンスを発揮するCPUの設計に優れ、クアルコムの「Snapdragon」など、スマートフォンに搭載されているCPUの多くがARMの設計を取り入れている。

だがそのARMを、業績不振が続くスプリントの立て直しが途上にありながらも、あえてソフトバンクグループが買収したことは大きな驚きをもたらした。そこまでして同社がARMを買収したのには、IoTが大きく影響している。

あらゆるデバイスがインターネットに接続するというIoTの概念が広まれば、それらのデバイスにARMの技術が採用されたチップセットが搭載される可能性が高い。そうなればARMの技術を採用したチップセットの拡大は現在のスマートフォン以上となり、売上が大きく伸びる可能性が高い。そうしたARMの将来性に目を付けて、買収を進めたといえよう。

ARMの設計を採用するチップセットが、スマートフォンをはじめとした多くの機器に搭載されていることから、IoTの普及による売上の拡大を見据えた買収といえる

そしてARMの買収に当たる少し前、ソフトバンクグループは保有するアリババの株式を一部売却して資金調達を進めたが、その他にも実は、スマートフォンゲームを手掛けるガンホー・オンライン・エンターテイメントやフィンランドのスーパーセルなどの株式を売却し、連結対象から外している。

これら2社は世界的に見てもスマートフォンゲーム市場での売上上位を占める企業なのだが、ソフトバンクグループはARM買収のため、あえてそれらの株式を売却したといっていいだろう。こうした動きからは、スマートフォンが広く普及したことで関連事業の成長が見込みにくくなったことを受け、次の成長につながる新しい事業へと、力の入れ具合を大きく変えようとしている様子を見ることができる。