興味深かったのが、「反映されやすい条件」と「反映しづらい条件」である。「○○した時に○○というエラーダイアログが出る」「○○なので○○がほしい」といったように、具体性、理由、背景が明快、そして簡潔なフィードバックが伝わりやすいという。海外の開発チームが読むのは、日本語文章を機械翻訳したフィードバックなので、日本のインサイダーが書いた文章が完全に伝わらないからだ。
一方、何が起きたのか曖昧なフィードバックは理解されず、スルーされてしまう可能性がある。複数の事柄が記載されているフィードバックも分類的な理由で扱いづらくなり、場合によっては見落としてしまうこともあるそうだ。また、「(フィードバックに目を通すレビューアーも人間なので)悪く書かれること心が折れてしまいそうになる」(入谷氏)。機能を改善・問題を解決するという主目的を念頭に、節度を持ったフィードバックを心掛けたい。
入谷氏のプレゼンテーションは、MS-IMEにまで及んだ。日本の開発チームは東アジア圏用MS-IMEを担当範囲とし、Windows 10 Insider Previewでは日々改善を加えている。より使いやすいMS-IMEを目指すために行ったユーザーフィードバックでは、「変換結果に単語が見つからない」「変換結果の日本語が間違っている」といった意見が断トツだったという。
そこで2016年10月に、SNS上でMS-IMEの誤変換を募集する「日本語入力誤変換マラソン」を実施したところ、「名詞+動詞」「名詞+名詞」といった誤変換パターンが明らかになった。これらのデータと利用状況(テレメトリー)データにもとづく誤変換の分類を精査し、ビルドごとで修正した効果あるか調査したところ、Windows 10 バージョン1703では、それらの誤変換がバージョン1607と比べて約3割も改善したという。このようにテレメトリーデータやMS-IMEが用意する「誤変換レポート」、そしてフィードバックにより、Windows 10のMS-IMEは一歩ずつ前進している。