ヘリコバクター・ピロリに感染すると、全例が胃腸症状を示すと思われがちだが、症状が発症するのは3割程度と言われている。保菌していても、大半が何も症状が出ていないケースがほとんどとのこと。
「感染した場合の症状ですが、通常の消化性胃・十二指腸潰瘍と同様で、食後(胃潰瘍)、食前(十二指腸潰瘍)の胃痛や胃部不快感を特徴とします。重症化すれば、吐血やタール便といった下血を認めます」
ヘリコバクターの感染経路
ヘリコバクターの感染経路は未だに明確にわかっていない。経口感染であることは間違いないが、「いつ」「どうやって」感染したのかという詳細については不明のままだ。
「主な感染は家族性で、母子感染が知られています。幼児に食事を与える際には注意が必要でしょう。この菌自体は酸性下でも生き延び、増殖できる特殊な性質を持っていますが、胃内の酸性度が低ければヘリコバクター・ピロリがより生きやすい環境になります。幼児などは胃内の酸性度が比較的弱いので、感染リスクは高いと考えられています」と井上医師は話す。
一番の恐怖は、ヘリコバクター感染が消化器であれば胃がんの原因になること。同時に子宮がんのリスクを上昇させることも知られている。ヘリコバクター・ピロリは、発がん微生物として初めて知られた細菌であるため、注意が必要だ。その他、特発性血小板減少性紫斑病やある種のリンパ腫に影響することも明らかになりつつあるとのこと。
ピロリ菌の有無を調べる方法
ピロリ菌の検査方法にはいくつか種類があり、複数の検査を行うことで正確な診断につなげる。基本は、鼻や口から吐く息の中にヘリコバクター・ピロリが生存するときに放出するガスの有無を検査したり、内視鏡で直接ヘリコバクター・ピロリの存在を胃粘膜上で確かめたりする方法など。これらの検査は消化器内科で可能となっている。