AppleがAIできること、噂のSiri対応スピーカーは登場するか
今回、ソフトウェアやサービス方面に関するアップデートの噂がほとんど聞こえてこないWWDC17だが、期待も込めて発表が噂されているのが「Siri内蔵スピーカー」と「AppleのAIに関する最新の取り組み」の2つだ。
「AppleがSiriのサードパーティ開放とAmazon Echo型デバイス開発を計画か」という話は1年前のWWDCの時点ですでに出ていたが、結局具体的な動きや発表は何もないままに1年が過ぎた。この間、Amazon.comはAmazon Echoの音声アシスタントを司る「Alexa」でムーブメントを起こし、2017年に入って以降は他の家電メーカーやスマートフォンメーカー各社もAlexa対応デバイスの市場投入を発表している。
Alexaの"機能"を意味する"スキル"の数は、サードパーティ提供のもので2017年2月時点ですでに1万を突破している。ハードウェア設計のためのモジュールも公開しており、今後もAlexaに対応したEcho類似のデバイスは多数登場することになるだろう。ライバルにあたるGoogleやMicrosoftもこの動きに追随しており、家庭向けの音声アシスタント装置がメジャーな地位を獲得するのもそう遠くないうちにやってくる。
この動きは、従来のAppleの戦略を考えると同社にとってあまり好ましくないもののように見える。現在Appleは「Siri」という音声アシスタントをiOSやmacOSなどを搭載したデバイスを持つユーザーに提供しているが、競合のAIアシスタントはこうしたプラットフォームの垣根を越えてやってくるため、クローズドな戦略を展開しているAppleにとっては大々的に反撃に打って出にくい。
そこでSiriのサードパーティ開放という話が出てくるのだが、ハードウェアの販売で利益を上げるAppleにとって、Siriの単なる開放はそれほどうまみが少なく、クラウド上でのビジネスで稼ぐモデルを構築しているAmazon.com、Google、Microsoftといったライバルと同じ戦略は採りにくい。筆者の個人的見解ではあるが、このWWDC17がAppleにとって、今後の戦略上の分岐点であり、ここで開発者らの注目を集められるかいかんで同社の将来が決定される重要な場所だと考えている。
BloombergのMark Gurman氏とAlex Webb氏によれば、AppleはこのWWDC17でSiri搭載のスピーカー型デバイスを発表し、このデバイス自体はすでに生産体制に入っているという。製造を担当するのは台湾のInventecで、同社はすでにAirPodの製造で実績を持っている。昨年2016末に開発の進んだプロトタイプが登場し、Apple従業員らの間で家庭内テストが進んでいるという話だ。
だが筆者の分析では、最後発となるAppleが同種の製品で注目を集めるにはよほど先進的な機能や工夫が必要で、ストレートに製品の市場投入を行うのは難しいのではないかと考えている。Alexaのスキルのように、デベロッパーらが参加する余地を作っての準備期間も必要であり、少なくともWWDC17でプラットフォームの発表を行ってから、実際の製品発売とサービス開始までには3カ月以上の期間を要するのではないかと予想する。
現在は個人アシスタントが中心のモバイル/PCプラットフォームにおけるAIの取り組みだが、そう遠からずBtoBからBtoCまでさまざまな分野での活用が進む日がやってくる。Appleが魅力的な会社であり続けるために、何らかの取り組みや技術的な進捗を来場する開発者、あるいはライブストリーミングや関連レポートを見る人々にアピールする必要がある。iOSを中心としたデバイスエコシステムをAppleが確立する一方で、AIを含めた次のプラットフォームの戦場はクラウド側へと移っている。噂のAIチップも含め、Appleがこの世界で何を実現しようとしているのかに注目していきたい。