AppleはSteve Jobs時代に「デジタルライフ構想」というMacを核にしたエコシステムの姿を示してきた。

また大人気となったデジタルミュージックプレイヤー、iPodを突破口に、Macの売上につなげる「ハロー効果」を狙う。またiPod向けにデジタルミュージックストアiTunesを用意し、CDやMDを駆逐してしまった。そしてiPodのアクセサリーを展開して、自社・サードパーティーともにエコシステムを構築する戦略を展開してきた。

Tim Cook時代のAppleは、エコシステムの中心をiPhoneに変えて、Jobs時代の構想を忠実に実現し、成功させてきた。むしろ、Macが中心だったときよりも、圧倒的に販売台数と生活の中の密着度合いが高いiPhoneの方が、より効果的に実現したと言える。

現在のAppleは、iPhoneの売上が65~70%を占めている。iPhoneユーザーがアプリを購買するApp Store、iPhoneと組み合わせてより高度な作業に取り組めるMacやiPad、そしてiPhoneとペアリングしてエクササイズやヘルスケア機能を追加するApple Watchという位置づけで、主要製品はiPhoneユーザーのために作られている。

MacユーザーとしてAppleを持ち上げるつもりは一切ない上で、冷静に考えると、Macについての「プロユーザー軽視ではないか」という批判も、さほど違和感がない。iPhoneユーザーの全てがプロユーザーではないじゃないかといわれれば、確かにその通りだ、と同意せざるを得ない。

しかし、それでも、Appleはこれまで守ってきたMacについて、きちんと取り組む姿勢を改めて示している。実際、2016年10月に投入した新型MacBook Proによって、販売台数、そして平均販売単価の向上が直近の決算の数字として表れている。

好調な販売台数となっている新型MacBook Pro

MacBook Air 11インチモデルの販売終了と、MacBook Air 13インチモデルのアップデートの停止は、MacBookシリーズをRetinaディスプレイを搭載するモデルへと世代交代させると同時に、1,000ドル以下の選択肢を絞ることで、プレミアムモデルとしての性格を強める結果となった。

Macも、PC市場の中で、iPhoneのような存在、つまり勢力としてはさほどでもないが、代わりがいない、付加価値の高い製品というポジションをしっかりと固めようとしているように思える。