Appleはスマートフォン市場において、市場の支配権を握らずとも、端末メーカーとして、そしてアプリ市場において、最大の収益を上げるのに成功した。いずれもAppleが定義したデバイスとビジネスモデルであり、それを上手に舵取りしながら、市場全体のトレンドをリードする立場にある。
その結果、我々はしばしば「Apple待ち」という事象に遭遇している。新しいテクノロジーについて、Appleが採用して初めて商品化され、またそのビジネスやアプリ、ライフスタイルの方向性が定義されるというものだ。直近でAppleによって開かれた市場は、スマートウォッチであることは言うまでもない。そしてワイヤレスヘッドホンにおいては、活性化への扉を開いている。
2017年のモバイル業界においては、GoogleとFacebookが、人工知能と音声コントロールや対話型インターフェイス、そしてカメラによる拡張現実(AR)を普及させるべく奮闘を続けているが、いずれもAppleが、両者とは重なる部分は大きいながらも異なる味付けをして、我々のユーザー体験を定義していくことになるだろう。VRについては、次の「Apple待ち」のテクノロジーとして、もうしばらく待合室に閉じ込められたままになるのかもしれない。
だが、Appleが数の上でのイニシアチブを握っているわけではない。AppleはiOSのアクティブなデバイスが1億台を突破したという数字を示して以来、その数字のアップデートをしていない。Googleは先週行われたGoogle I/O 2017で、Androidのアクティブデバイスが20億台を突破したことを発表している。少なくとも、20倍近い台数の差が、GoogleとAppleの間にはある。
それでも、Appleは活発な購買意欲のある先進国市場で半数近くのシェアを確保している。より確実に収益化につながるユーザーを押さえて、非常に効率的なビジネスを展開しているのだ。
これまでのコンピュータの世界では、プラットホームを統べた企業が市場で君臨し、利益を最大化してきた歴史がある。AppleはMac vs PCの戦いで、そのことを思い知った。
Appleがスマートフォンで再起を図り、これまでの不利な状況を乗り越え、新たなスタンダードにたどり着いたことは、今振り返れば、テクノロジー企業の興隆の歴史の中でも興味深く、また興奮に値する事件であったといえるだろう。