また、ソニーでは、Android TVを、重要な差別化ポイントにあげており、テレビの新たな視聴環境を提案。ソニーのテレビのインターネット接続率は70%と高く、さらに音声検索により、動画コンテンツを探し出す利用者が68%と、3人に2人に達している。受動型のテレビ視聴から、能動型のテレビ視聴へと提案を変えることに成功している。
平井社長は、ソニーの高付加価値商品が市場に受け入れられていることを裏付けるように、テレビの平均販売単価が上昇していることを示す。
「2014年度時点の平均販売単価は5万7000円、2017年度は6万7000円に上昇する見通しである」とする。
3年間で1万円の平均単価の上昇は、付加価値モデルへのシフトを示すものであり、特筆できる成果のひとつだといえよう。
平井社長は、「『規模を追わず、違いを追う』という施策は、いまから思えば事業運営にとっては、基本の施策とも言える。だが、私が信頼し現場を任せた事業トップがぶれずに強いリーダーシップを発揮してくれたこと、そして何より、社員たちが『ソニーのテレビを必ず復活させる』という強い想いで一丸となり、改革に真摯に取り組んでくれたことの成果だと考えている」と、黒字化への道のりを総括する。
ターゲットを絞った上、シェアをとりに行く
平井社長は、「こういった改革を経て、テレビ事業は相当な筋肉質の事業に変換できたと考えている」とする。だが、その上で、「今後の課題は、持続的な収益創出。シェアを獲りにいくべきところはとりに行くことも必要になる」と今後の方針を示す。
これまでは、テレビ事業においては、シェア拡大といった言葉を使わなかった平井社長だが、今回の経営方針説明では、明確に「シェア拡大」の取り組みを示して見せた。
ここにもテレビ事業復活の宣言が見て取れる。
だが、闇雲にシェアを追うことはしない。「規模はいたずらに追わない。どの地域でも、どの分野でも、商品点数を増やしてシェアを取りに行くことは考えていない。ターゲットを絞った上で、勝負をかけていく場所でシェアを伸ばしていく」とする。
具体的なシェア拡大のターゲットとしてあげたのが、アジア市場だ。「とくにインド市場は、ソニーブランドが支持されている市場である。ラインアップの強化と、強力なマーケティングによって、力を入れていく市場になる」とした。
機能面だけでなく、感性に訴える商品を目指す
ソニーのテレビ事業は、着実に回復基調にある。そして、営業利益率5%は、テレビ事業単独で見れば、決して悪い数字ではない。ただ、これまでの戦略は縮小均衡型の再生であり、今後、シェアを獲りに行くというギアチェンジは、これまでの取り組みとは大きく変化することになる。業績の回復によって、成長戦略の起点に立ったソニーは、今後、テレビ事業の次の姿を描くことになるはずだ。
そのキーワードを、平井社長は「KANDO@ラストワンインチ」としている。
通信業界では、かつてブロードバンドを家庭に引くための残りワンマイルの敷設に大きな課題があったことを、ラストワンマイルと表現。ラストワンインチは、それに引っかけたものだが、2016年後半に、平井社長が社内で使ったところ、社員からの反応がよかったことから、その後、気に入って、積極的に使っている言葉だ。
そして、KANDO(感動)は、平井社長が講演などでは必ず使う、平井ソニーのモノづくりを象徴する言葉である。