映画事業、収益体質の確立に向け1からのスタート
4つめは、「喫緊の課題として認識している」と平井社長が語る映画分野だ。
2016年度に1121億円の営業権の減損を計上し、805億円の赤字を計上したが、2017年度はこれが無くなることもあり、390億円の黒字を目指す。
「映画分野はソニーにとって重要な事業だと位置づけており、映画制作事業の収益改善に向けた施策の遂行に優先度をあげて取り組んでいる。ネットワークが進化し、映像コンテンツの楽しみ方が多様化するなかで、魅力的なコンテンツに対する需要はかつてないほどに高まっている。コンテンツクリエイターと強固な関係を築き、質の高いコンテンツを作り出す」とする。
だが、「2017年度の利益見通しは、中期経営計画の立案当初の水準を大きく下回るものであり、この問題を大きく受け止めている」と、平井社長は語る。
ソニー・ピクチャーズエンタテインメントの会長兼CEOにアンソニー・ヴィンシクエラ氏を招へい。「米国のエンタテインメント業界において素晴らしい実績をあげてきた人物であり、技術のトレンドやグローバルな市場環境の変化についても高い見識を持っている。また、チームビルディングを重んじており、彼ならソニー・ピクチャーズのマネジメントや社員のベクトルをひとつにして、この事業の再生を実現してくれる」と期待する。平井社長自らが人選したヴィンシクエラ氏による再生が、この6月からスタートすることになる。
「事業モデルの性質から、結果を出すには一定の時間を要するが、腰を据えて、変革に取り組み、高い収益を創出する事業へと転換させていく」と、平井社長は意気込む。
映画事業は収益体質の確立に1から取り組むという段階にあり、長期的視点での体質改善に挑むことになる。
そして、最後が、収益性が悪化しているモバイル・コミュニケーションである。
スマホは最新技術で差別化、収益を高める
エレクトロニクス事業は、2016年度第4四半期連結業績で、6セグメントの合計で黒字化。これは、1997年度以来、19年振りのことであり、回復基調にあることを裏付けている。
「長年苦戦をしてきたコンシューマエレクトロニクスが再生し、安定的な収益貢献が期待できる事業になってきた」と、平井社長は期待を寄せる。
だが、その一方で、「コンシューマエレクトロニクス事業全体を見渡した時に、スマートフォン事業の収益性にはまだ課題が残っている」と、平井社長は指摘する。
モバイル・コミュニケーション分野の2016年度の業績は102億円の営業黒字。2017年度は50億円の黒字を見込む。
「徹底した構造改革と、商品および販売地域の絞り込みにより、2016年度の黒字化を達成。商品力、オペレーション力を着実に向上していると実感している。最も顧客接点が多い『ラストワンインチ』の商品であり、カメラ技術を中心に、ソニーの最新技術を詰め込むことで、違いが出しうる事業だと考えている」とする。そして、「2017年度は、IoTなどの新規領域の開拓と合わせて、急速な環境変化にも迅速に対応できるような慎重な事業運営を行っていく」とした。