また、PS VRは、2016年10月の発売直後は、全世界で品薄が続いていたが、2017年2月から増産を開始。対応ゲームは100を超えており、ノンゲームコンテンツの開発も積極的に推進しているという。

「The Chainsmokersの最新ヒット曲であるParisのミュージックビデオは、VRの技術を生かしたもので、PS VR専用のコンテンツとしてダウンロードできる。従来のプレイステーションのユーザーのみならず、アーティストのファンからも好評を博している」とし、ゲームユーザー以外を取り込んで動きにもつながっていることも示した。

収益領域の拡大は、ゲーム&ネットワークサービス分野の成長を支えているのは明らかだ。

安定成長目指す金融

2つめが、「長年に渡り、グループ最大の収益貢献をしてきた」と位置づける金融分野だ。2017年度には、ゲーム&ネットワークサービス分野と同じ1700億円の営業利益を目指す。対前年成長率は2.2%増と安定成長を目指す。

「金融分野は、顧客とのラストワンインチの接点を有するソニーブランドを生かしたリカーリング型サービス事業であり、安定的な高収益を堅持している。既存業界にソニーが参画することで変革をもたらす、イノベーションのDNAをもった事業でもある。ソニーが中長期戦略で重視しているポイントを複数備えている重要な事業だと捉えている」と語る。

ここも安定事業として、収益貢献に寄与するのは明らかだ。

半導体、市場環境の変化への対応・集中領域の見極め重要

手放しで評価できるこの2つの事業と比較し、課題が見え隠れするのが、このあとに触れる3つの事業だ。

最初が半導体事業である。ここでの大幅な収益改善は、5000億円達成に向けた重要な鍵になる。2017年度の営業利益見通しは、前年度の78億円の赤字から、1200億円の黒字へと大幅な改善を見込む。

平井社長は、「熊本テックが熊本地震により、デジタルカメラ、監視カメラ向けのイメージセンサーを中心に生産活動ができない苦しい時期があった。また、2015年度後半にはハイエンドを中心としたスマホの成長鈍化の影響から、販売が低迷し、業績が急速に悪化した」と、これまでの低迷について説明。

「だが、大きな損失を計上したカメラモジュール事業では、2016年度に抜本的な構造改革に取り組み、熊本テックの外販向け高機能カメラモジュール事業の開発、製造の中止、中国・広州の工場売却を実施した。中国系スマホメーカーとともに拡販活動に取り組み、2016年度後半から業績に効果として表れている。スマホを取り巻く環境をみると、複眼化の加速、フロントカメラの高画質化、動画性能の重視といったトレンドがある。これはソニーの強みが発揮できる高性能な製品領域が拡大していることを意味しており、今期は大幅な収益改善を見込み、グループ全体への収益貢献も見込んでいる」とする。

熊本地震の影響がなくなること、複眼化の加速がプラス要素になること、さらには、カメラモジュール事業の中国工場の売却益で270億円も加わるといった要素も増益に寄与する。

さらに、平井社長は、「性能、歩留まり、品質では世界一の評価を得ている。しかし、生産リードタイムや製造コストではまだ改善すべき点がある。車載向けを含めて将来に必要な投資を行っていく。さらなる高収益事業を目指す」と語る。

半導体部門への設備投資は、同部門全体で2017年度に1300億円を見込んでいるが、そのうちイメージセンサーで1100億円を計画。300ミリウェハー換算で、月産8万8000枚の体制を、2017年度中に、10万枚まで増加させる計画を打ち出している。

「デバイス領域では、環境変化への対応スピードと、強みのある事業へのフォーカスが必要である」と平井社長も指摘するように、この分野は市場環境の変化が激しい。この数年は、その変化に対応できず、業績を悪化。そこに熊本地震の影響が追い打ちをかけた。だが、2017年度には、これらの課題が解決できたと、平井社長は判断しているようだ。それが目論見通りにいくかどうかが注目点といえる。高い利益成長を見込む半導体事業が、営業利益5000億円達成の重要な鍵を握ることは間違いない。