走る・曲がる・止まるを担保するGLMのノウハウ
かつて、EVが急速に脚光を浴びた1990年代後半には、モーターとバッテリーで動くEVであれば、家電メーカーなどの新規参入も容易なのではないかとの声が上がったことがある。だが、クルマづくりはそう簡単ではない。動くかどうかではなく、ちゃんと走り、曲がり、止まることができるという自動車の基本性能が確かでなければ、安全に公道を走ることはできないのである。
GLMは「トミーカイラZZ」の電動化によって、スポーツカーの走行にも耐えうる基本性能を実現してきた。その上でGLMの田中取締役は、「GLMの強みは、何社ものサプライヤーとのつながりを持ち、各社で何ができて、何ができないかをよく分かっているところです。また、公道を走るための認証取得などの知見もあり、それが7年やってきた我々の成果です」と語っている。
また、プラットフォームの提供についても、「トミーカイラZZのプラットフォームをそのまま、小型車やSUVなど他の車種に使いまわすのではなく、それぞれの車種の要望に合わせて、最適な仕様で提供するという意味です」と述べた。
公開されている写真などから見るトミーカイラZZのEVプラットフォームは、まさにスポーツカー向けであり、あたかもレーシングカーのモノコックやサスペンションを見るようだ。なにしろ、トミーカイラZZを設計した解良喜久雄氏は、レーシングカーデザイナーである。それを、このまま他の車種に使うわけではないと、田中取締役は話すのである。
その上で、プラットフォーム全体で提供するだけでなく、個々の要望に応じた部品単位での対応もできるという。相談や依頼に応じて、GLMは幅広い回答を用意できるというわけだ。
環境対応を急ぐ中国メーカーも注目?
こうしたGLMの新しい取り組みに対し、国内ばかりでなく、中国や東南アジアからも問い合わせが届いているという。なかでも大気汚染が深刻で、NEV規制を推進しており、また原子力発電への投資が著しい中国においては、EV導入を精力的に進めようとする現地自動車メーカーや新規事業者の間で、GLMの存在感が大きくなっていると想像することができる。
一方、国内では、やはり原価を抑えた手ごろなEVがどこまで実現できるかが課題だ。原価について田中取締役は、「それぞれの案件に応じて、材料を変更するなど原価低減の相談にも応じられるようにしたい」と語っている。
大手自動車メーカーは、グローバルな視点でのEV構想を持つ傾向にあるが、国内において私は、“100km100万円の軽EV”という構想を、あらゆる機会をとらえ提唱している。そのような日常の実用に足る身近なEVの登場を待つ声は、実際に多く届いてもいる。それを実現できる可能性を、GLMのEVプラットフォーム提供事業は支えてくれるかもしれない。
ただ、それを実行する意欲と資金力を持ち、GLMと共同歩調を取れる新規事業者が登場するかどうかは未知数だ。そこは期待しつつ、注意深く見守っていきたい。