この日、KDDIで公開されたのは「高速・大容量」と「低遅延」の特徴を活かしたデモ。新宿のKDDIビルの周辺に構築された"5G実証実験エリア"の中に、5Gの電波を拾うアンテナを備えたバスを走らせ、その車内で3つのユニークなデモを行った。

KDDIビルの周辺に5G実証実験エリアを構築。5Gの電波はビル前の鉄塔から吹かせた(左)。5Gの電波を受信できるアンテナを備えたバスの車内で、デモを行った(右)

5G実証実験エリアの概要

デモAは、KDDI研究所で開発中の「自由視点映像」と絡めたもの。600Mbpsもの高速通信がコンスタントに必要となるため、現行の4G LTEでは利用できないが、高速・大容量の5Gならスマホでも楽しめるようになるという。その内容は、複数のカメラで撮影したサッカーの試合の映像を合成することで、カメラを設置していないアングル(例えばピッチ上や上空)からも試合を視聴可能にする、というものだった。

任意の視点から映像を楽しめる「自由視点映像」。好きなアングルから試合を視聴できる。大容量のパケット通信が必要になるが、5Gならスマホでも閲覧可能になるという

デモBはGPSとVRを連動させたもので、ユーザーの動きに追随してVRの映像が変化する。これを実現するには、VR映像を生成するサーバーが送信する大容量のデータを、遅延なく受信できる必要がある。このため、やはり5Gの実用化が待たれる。

この日の車内では、KDDIが宇宙開発チームHAKUTOと目指す"月面探査レース"をモチーフにしたデモが行われた。VRゴーグルを装着すると、ユーザーが腰を下ろしているのは月面探査機の上だった。360度、見渡す限り月の世界が広がっている。バスが走ると、その速度に応じて探査機も月面を走り出す。バスが曲がると探査機も曲がる、といった具合だ。まるで遊園地のアトラクションに乗っているかのような感覚が味わえた。

GPSとVRを連動させたデモ。KDDIでは、やがて一般的になることが予想されるバーチャルとリアルを合成したMR(Mixed Reality)にも、この技術を応用していきたい考えだ

デモCでは、容量が500MBある動画のダウンロード時間を体感した。はじめに4Gによるダウンロード(実効速度は30Mbpsほど)が開始され、それなりに時間がかかった。計算上は2分前後が必要となる。次に通信回線が5Gに切り替わると、ほぼ1秒でダウンロードが完了した。この日のデモでは、3.5Gbpsほどの実効速度が出ていた。

大容量のデータを瞬時にダウンロードできるのも5Gの魅力。デモにおける実効速度は3.5Gbpsほどで、これなら映画も数秒で落とせてしまう