Facebookが2017年4月18日から開催した開発者会議「F8」。大きな発表はなかったものの、Facebook本体に加えて、昨年プラットホーム化したMessenger、そしてInstagramもプラットホームとして、改めてその存在感を誇示するようになってきている。
Facebookは、これらのアプリに、傘下のWhatsAppを含めた4つのアプリを擁しており、App Store、Google Play、いずれのアプリストアにおいても、ダウンロード数トップ5のうちの4つを占めるに至っている。そんなFacebookで新たにプラットホーム化したのはカメラだった。「カメラを拡張現実の第一のプラットホームにする」と宣言したFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏。これには少し意外だと感じる部分もあった。というのも、それまでFacebookは、Oculusを買収し、Facebookで360度写真・ビデオの視聴環境を整えるなど、どちらかというと仮想現実、VRに注力してきたからだ。実際、今回のF8でも、「Facebook Spaces」というVRコミュニケーション環境を披露した。600ドルのVRゴーグルOculus Riftがなければ参加できないので、あくまで実験的な色が強いサービス、という印象は拭えないが。
Googleは、AndroidスマートフォンによるVR環境を2016年に整えてきた。Daydreamは、スマートフォンのスペックやソフトウェアの環境を定義し、同名のスマートフォンを装着できるゴーグルを発売しており、Facebookとともに、VRに積極的というイメージが強かった。
一方Appleは、以前の記事でも紹介したとおり、拡張現実、ARへ強い関心を寄せている。今回FacebookがARのプラットホーム化をアピールした背景には、何があるのだろうか。そして、Appleの新型iPhoneは、2017年をARイヤーへと誘導することになるのだろうか。
F8でザッカーバーグ氏は、FacebookにおけるARのプラットホーム化の背景を探る上で、見逃せないのがSnapchatの存在だと認識しているようだ。アプリストアの上位5位のうちの4つを占めるFacebookだが、残り1席にSnapchatが居座り続けている。2017年3月に上場したSnap Inc.が提供するSnapchatは若者に人気がある。10秒以内にコンテンツが消える仕組みとストーリー機能で、非常にアクティブかつ高い成長率を誇ってきた。
ユーザー数の上ではFacebook、Instagram、MessengerがそれぞれSnapchatを凌駕しているが、ユーザーのコンテンツ投稿率6割、1日あたりの平均滞在時間25分という非常に高いエンゲージメントをSnapchatは発揮し、Facebookにとっては「邪魔な存在」以外の何物でもなくなってきている。そういった状況下でのFacebookの対抗策は非常に露骨だった。Snapchatが開始した24時間でコンテンツが消えるストーリー機能に対しては、Instagramは全くの同名で、Facebook Messengerには「MyDay」という名称で、同様の機能を導入し、Snapchat以上の参加人数を獲得するようになった。
そうした背景があった上で、今回の「カメラをARプラットホームにする」というコンセプトを聞けば、Facebookが、「新しいカメラ企業」を標榜するSnap Inc.に対抗する施策であることを疑う人は少ないだろう。