初めて読むなら既刊も新刊

続いて小学館、翔泳社、講談社、電子取次のメディアドゥから、デジタル事業の販売・宣伝担当者が集まり、LINEの編集担当者を交えてのトークとなった。

各社はいずれも出版業界を代表する企業であり、配信タイトル数も莫大だが、限られたスマートフォンの画面上で一点一点を訴求していくのは難しい。書店なら「平台」に置いてもらえば目につきやすいが、電子書籍の場合は定期的にフェアやキャンペーンを開催することで、できるだけユーザーの目に触れる機会を作っているという。

無料配信をきっかけに、既存作品が売れる現象については、在庫が売れるということで歓迎しているという。結局のところ、初めて作品を読む読者にとって、既刊であれ新刊であれ新作と変わらないのであり、既存コンテンツが再評価されることは販売面ではプラスでしかないわけだ。古いタイトルでもスポットライトを当てて再び注目してもらうという手法は、アーカイブが巨大になるほど有効だろう。

無料連載や無料1冊提供といった手法は、電子書籍が普及する少し前から、一話を丸ごと公開することでネット上の話題にする手法が取られており、効果があるのははっきりしている。前述のように紙の本が売れるきっかけになっていることもあり、今後もこうした「無料で釣る」手法自体は続いていくようだ。

今後はウェブでの無料連載から新しい才能の発掘も大切だという声もあった。紙の雑誌から人気作が登場して単行本が売れる仕組みが縮小しつつあるためだ。

これについては各社とも、無料で読めるウェブコミック連載を展開して、新しい才能の発掘に力を入れており、その中から人気作も登場しつつある。少し前に流行った、ウェブ掲示板発の小説やライトノベルが単行本化された動きに似ていると言えるだろう。こうした動きは大手出版社だけでなく、紙媒体を持たない小さな出版社やイラスト投稿サイトなども参入して競争が激化しており、いかに才能を多数発掘できるか、各社編集者のセンスや眼力がポイントとなりそうだ。