そんな状況の中、LINEマンガはスマホマンガアプリでのダウンロード数、スマホマンガアプリの月間利用者数(MAU)ランキング、スマホマンガアプリの一人当たりの利用時間ランキングでいずれも1位の座についたという。売上ではないこれらの順位に意味があるかどうかは議論の余地があるが、若者を中心に広く支持されているLINEプラットフォーム上のサービスということで、多くのユーザーに利用されていること自体は疑いがない。

景気のいい数字が並ぶが、肝心の売上について触れられていないのが残念

続いてLINEマンガの最新実績が発表された。同サービスは電子書籍の販売に加え、無料のマンガ連載などを行なっており、240社以上の出版社と契約して、18万点以上の電子コミックを配信しているという。このうち、無料連載プラットフォームの読者数は1300万人、閲覧件数は42億回に及ぶとのこと。様々な電子書籍・コミック配信サービスがあるが、その中でも最大級と言っていいだろう。

ここでちょっと興味深い数値が公表される。LINEマンガで無料作品の読了後に、なんと39%ものユーザーが「その作品の電子または紙の本を購入している」というのだ。実に約4割もの読者の購買意識を刺激したことになる。これは広告手段と割り切っても、かなりの効果があると言えるだろう。

数値の合計が100%を超えているので複数回答有効のアンケートだったと思われるが、4割近くのユーザーにとって購買意欲が刺激されるというのは意外な数字だった

リアル書店にもポジティブな影響

続いて販売現場の声として、トーハンの川村明・コミック営業推進室アシスタントマネージャーと、白泉社の小見山康司・販売宣伝部部長代理、それにLINEマンガ編集チームマネージャーの村田朋良氏が登場。村田氏は「ドラマ化されたマンガは、放送翌日に1巻の売上がリアル書店でピークになる」という現象を紹介し、これと同様の現象がLINEマンガでの無料配信でも起きているとした。

トーハンの川村氏によると、3年ほど前に小学館の『なみだうさぎ~制服の片思い~』(作者:水瀬藍)の売れ行きが突然書店で大きく動いた。通常であれば1巻は2巻以降より多く売れるのだが、このときは2巻が売り上げトップを記録していたのも特徴的だった。原因を調べたところ、前日にLINEマンガで1巻が無料配信されたのがわかり、以来、LINEと情報を分析しているという。

また白泉社の小見山氏によれば、2~3年前からきっかけがよくわからないが突然売れ始めるマンガがあり、調べて見たらやはりLINEマンガで無料連載をやっていた、という。このように電子版の無料連載が書店での販促となることがわかったため、現在はLINEとリアル店舗での連動フェアも企画されている。

2016年に女性向けで人気No.1だった『BLACK BIRD』(作:桜小路かのこ、小学館刊)、2017年男性向けで2月、3月にそれぞれ2位、1位だった『ピアノの森』(作:一色まこと、講談社刊)、『アイシールド21』(原作:稲垣理一郎、作画:村田雄介、集英社刊)は、いずれも完結してから数年経つタイトルばかりだ

LINE Beaconを埋め込んだ書棚にLINEを起動した状態で近づくとプロモーション情報などが流れる仕組みを展開。こうしたリアル店舗との連動は現在LINEが多方面で展開している戦略に通じている