Ryzen PCのキモはメモリの安定性。DDR4 BOOSTでOCメモリを飼い慣らせ
Ryzen 7およびそのプラットフォームでは、それまでのDDR3メモリに代わり、DDR4メモリが採用されている。IntelがSkylakeと100シリーズでDDR4メモリを初めてメインストリームに採用した際も、DDR4メモリの安定性が課題だったが、AMDが初めてメインストリームにDDR4メモリを採用した今回も同様のことが生じている。
新しい規格のメモリを安定して動作させるためには、しっかりとした回路設計が必要だ。MSIは、100シリーズチップセットの際と同様、メモリ回路の最適化を「DDR4 Boost」としてアピールしている。
BIOS 1.3以降ではIntel用のOCメモリプロファイルであるXMPを読み込める「A-XMP」機能が搭載された。そこで、このA-XMP機能の動作を確認してみた。
今回このA-XMP機能をテストしたメモリから紹介しよう。用意したのはKingstonのOCブランドである「HyperX」シリーズの2製品だ。Kingstonは、米国系メモリメーカーであるとともに、独立系メモリモジュールメーカーとしては最大手だ。自作経験の長い方には2000年以前からお馴染みのメーカーだろう。
さて、Ryzenのように新しいCPUが登場する際、メモリの相性、安定性などが課題となるわけだが、KingstonはAMDとともにRyzenへの最適化作業を早い段階から進めていたとのこと。そうした意味で、Ryzen環境で安心して利用できるメモリと言える。
まずはDDR4-2400の、OCメモリではあるが比較的エントリー向けのモデルとなる「FURY DDR4 HX424C15FB2K4/32(DDR4-2400)」。FURY DDR4(DDR4-2400)を搭載した場合、A-XMPには、DisableとEnableという2つの項目が表示された。ここでEnableを選択すれば、FURY DDR4(DDR4-2400)に格納されているXMPプロファイルの、DDR4-2400の設定が適用される。
なお、2枚まではこのとおりだったが、4枚挿した場合は異なる。4枚挿した場合でもA-XMPをEnableに出来るが、実際の動作モードはDDR4-2133だった。これはRyzenのメモリコントローラの制約と合致する。今のところ、Ryzen自体の制約を超えることはできないようだ。
Enableとした場合はDDR4-2400設定で起動した。しかしFURY DDR4(DDR4-2400)にはJEDECプロファイルにもDDR4-2400があるので、アクセスタイミングなどでの細かなチューニングが適用されるのみだ |
次に試したのはHyperXブランドでも最上位の「Predator DDR4 HX433C16PB3K2/16(DDR4-3333)」だ。
こちらを挿すとA-XMPの選択肢がDisable、Profile 1、Profile 2という3つに変わった。その上で、Profile 1はDDR4-3200、Profile 2はDDR4-2933となった。DDR4-3333はRyzenのメモリコントローラの上限を超えるため、調整が働いたようだ。どちらかと言えば現在のAMDの仕様のためだろう。
実際、A-XMPのBIOS項目の直下にはDDR4-3333の設定が表示される。一方、DDR4-2933動作のProfile 2も、直下にはDDR4-3000の設定が表示される。Predator DDR4(DDR4-3333)は、JEDECにもXMPにもDDR4-2933のプロファイルはない。ならばDDR4-3000で動作してくれてもよいところだが、どうやらBIOS 1.3の場合、Profile 1がRyzenのメモリコントローラの制限に引っかかると、Profile 2もProfile 1に準じてクロックを落とされてしまうようだ。OCメモリを検討されていてA-XMPを試したいという方は、現状、DDR4-3200超のモジュールは持て余す格好になりそうだ。