とにかく1度、来てもらうための戦略

「今回のバーガーマンスはバーガー戦争への参戦ではなく、ウルフギャングのイメージを変えたいという意図があります」。小林氏は言葉を続ける。

「(ウルフギャングは)老舗ステーキハウスというよりは、高級ステーキハウスという面が定着してしまった感があります。ステーキハウスはやはりディナーがメイン。『昼間からステーキ?』というお客様のために、従来からクラシックバーガーを提供していますが、敷居が高いという印象があるためか、昼の客数は決して多くありません。もっとウルフギャングをフレンドリーに感じてほしいと思います。ランチタイムに来店いただければ、イメージが変わるはずです」

丸の内店の外観

確かに、ウルフギャングといえば「老舗のステーキハウス」というよりは「高級レストラン」というイメージが定着している。気軽に入れる、身近なレストランと考えている顧客は多くないのではないだろうか。実際に来店する前に、ハードルを感じてしまっている潜在顧客もいそうだ。ハンバーガーという新たなタッチポイントは、「まずは1度、お気軽にお越しください」というウルフギャングからの招待状と考えることもできる。

高いのには理由がある

ウルフギャングが“高級”になってしまっているのも、店側が意図してのことではない。高価格の背景には強烈な肉へのこだわりがある。

「(日本の)4店舗で計10トンくらいを米国から空輸し、ドライエイジング(熟成)させており、フローズン(冷凍)はしていません。特に、本土でプライムグレード(最上級)の肉が発生しやすい肉処理場から持ってきた肉を使用します。米国全体でも2%くらいしか存在しない肉とも呼ばれています。それしか使いません」

丸の内店の店内の様子

高いレストランと称されるのも、売り物の肉に輸送コスト(送料)や日本の輸入関税(現在約38.5%)などが上乗せされているためなのだ。品質に妥協しないから、自然と価格が上がってしまう。

高級レストランというイメージからの脱却。これがバーガーマンスを仕掛ける意図のようなのだが、ウルフギャングのハンバーガー攻勢には、もう1つの見方がありそうだ。それは、“六本木・老舗ステーキハウス代理戦争”の号砲という側面である。