新たな気持ちで2017年を迎えたのが昨日のことのようだが季節が過ぎるのは速く、既に1年の半分近くが経とうとしている。筆者宅のクローゼットを開けるともう1カ月くらい着ていない冬服が未だに場所を取っており、読者の皆様の中にも「衣替えなどとうに済んだわ」という人もいれば「もうしなくてもいいかなって思ってる」みたいな人もいるだろう。今回はどちらの人にも役に立つ情報を紹介したい。
服の「虫食い」である。気づけば服に小さい穴が空いていたという経験はないだろうか(筆者はあった)。というか、虫食いがそもそも何なのか皆さんご存じだろうか(筆者はよく知らなかった)。今回は、衣類用防虫剤「ムシューダ」を製造するエステーのムシューダ担当・高野豪(たかのつよし/「高」ははしご高)さんに虫食いについて基本から教わってきた。
本当に「虫」が服を食べている
――よろしくお願いします。僕も含めて現代っ子は服の「虫食い」という現象にあまりピンときていない気がして、「そもそも虫食いとは?」というところからお聞きできればと思うのですが
意外と「菌」や「カビ」みたいなイメージを持っている方が多いみたいなのですが、「虫食い」は文字通り「虫」が服の繊維を食べることによって発生します。主に「ヒメカツオブシムシ」「ヒメマルカツオブシムシ」「イガ」「コイガ」の4種類の虫の幼虫がその犯人ですね。このセーターに空いている穴、これが虫食いです。
――僕もこういう穴がセーターに空いていた経験があるのですが、引っかいて空いてしまった穴とはどう見分ければいいのでしょうか
引っかいて空いた穴との見分けは確かにつきづらいのですが、引っかき傷の場合は穴の周りから糸がピョーンと飛び出ていたりしますよね。虫食いの場合、虫が繊維そのものを食べてしまうのでそういった痕跡がなく穴が空きます。
それから……、衣類害虫は食べた繊維と同じ色のフンをするので、穴の周りに色のついた粉のようなものが散っていたらほぼ間違いなく虫食いですね。
――フンかぁ……。発見した時のショックが大きそうですね。どういう服が食べられやすいのでしょうか
動物性繊維のものがよく食べられますね。よく「高い服ほど食べられやすい」といいますが、ウールやカシミアが大好物で、次に綿や麻など植物性の繊維が好まれます。
――「高い服ほど~」というのは、普通のウールよりもカシミアが好んで食べられるということでしょうか
そうですね。たぶん、カシミアの方が食べやすいんですよね。肌触りがいいということは、繊維が柔らかいということなので。人にとっての高級素材は虫にとっても高級食材なんです。
家の中で繁栄してしまうことも
――贅沢な虫ですね
今日は元気なヒメカツオブシムシの幼虫を持ってきましたので、実際に見てみてください。
――うわ! 思ったより大きい
さきほど挙げた4種類の中では、この虫が一番大きいですね。幼虫で7mm~10mmほどあります。暗いところが好きなので、こうやって明るいところに出すと布の下に潜ってしまうんですよ。ほら。
――こいつに服を食べられているんですね……嫌だな……
ヒメカツオブシムシの生涯は1年間で1サイクルなんですが、幼虫の期間が約10カ月あるんですね。服を食べるのは幼虫だけです。で、脱皮を繰り返して大きくなって、約10カ月経つとサナギになって成虫になります。
――成虫になるとどうなるんですか
服は食べませんが、卵を産みますね。服に。
――嫌すぎる
衣類害虫は気温15度~25度・湿度60%以上の環境を好むのですが、今は住宅環境が良くなっているので、夏や冬も一年中この環境を保っている家が多いですよね。なので、衣類害虫も家の中で孵化と成長のサイクルを繰り返してしまう状態になりがちです。
――最悪ですね。衣類害虫は、最初はどこから家の中にくるのですか?
成虫が外から家の中に侵入して、卵を産み付けることで虫食いが起こるケースが多いと思います。カツオブシムシの成虫は人に近いエリアに生息しているので侵入を完全に防ぐのは難しいですね。窓の隙間とかドアの開閉とか洗濯物とか、経路はたくさんあるので……。
――そこで防虫剤の出番というわけですね
そうなんです。
次のページでは、「ムシューダ」に代表される防虫剤の賢い使い方や、誤解されがちなことを紹介しよう。