技術の進化でより現実的なARの実現が可能に

にもかかわらず、なぜ現在、ARが再び注目されるようになってきたのだろうか。その理由はやはり、技術的な進展によってより高度なARの表現が可能になったことにあると考えられる。ARは一過性のブームこそ過ぎ去ったものの、そのポテンシャルが高いことに変わりはない。それゆえブーム後も、ARの研究開発に取り組む企業自体は多く存在していたのである。

しかもARがブームとなった2009~2010年頃と比べると、現在のスマートフォンのハードウェア性能は劇的な進化を遂げ、高度な処理が可能となっている。また搭載されるセンサー類も大幅に増えたことから、あらゆる手法を用いて現実空間の位置や物体を捉えられるようになったのだ。

先に触れたTangoのように、ハードウェア的に機能を拡張するという手法だけでなく、SNOWなどのように映像から顔や物体を認識し、その位置をトラッキングするソフトウェア技術なども、現在では確立されている。従来用いられていたマーカーやGPS、ジャイロセンサーなどだけでなく、そうした新しい要素技術を組み合わせることによって、より高度なARが実現できるようになったわけだ。

ZenFone ARなどTango対応のスマートフォンには、通常のカメラに加え3つのカメラが搭載されており、それらを活用することで物体との距離などを測ることができる

加えて言うならば、VR(仮想現実)の人気が高まっていることも、ARが注目されるようになった要因の1つといえるだろう。ARとVRの組み合わせによって、現実空間と仮想空間を融合した複合現実(MR)の実現が期待されていることから、VRと並行してAR関連の技術進化も注目されるようになった部分も大きいのだ。

当初のARブームが、ARの存在そのものを伝える上で大きな役割を果たしたとすれば、現在のARに対する注目の高まりは、ARが本格的に普及するための第一歩だといえる。ARに対する技術やプラットフォームの開発はより加速していくと考えられるだけに、今後の普及に向けてはARを活用したサービスやコンテンツをいかに増やしていけるかが、大きなポイントとなりそうだ。