「セカイカメラ」終了で一度は去ったARブーム
こうした具体的な動きだけでなく、アップルがAR関連の技術やデバイスの開発を進めているという報道が一部でなされているなど、ARに対しては現在多くの企業が興味や関心を示しており、今後一層大きな広がりを見せる可能性がある。
だが、ARといえば以前にも大きなブームが巻き起こり、多くの企業がAR関連サービスを手掛けて注目を集めていた時期があった。そのけん引役となったのが、頓智ドットが2009年より提供していた「セカイカメラ」である。
セカイカメラは、スマートフォンのカメラを用いて現実の風景を見ると、「エアタグ」と呼ばれる情報が重ねて表示され、それをタップすることでエアタグ内のテキストや画像などを見ることができるというもの。エアタグは現実世界の建物やオブジェクトなどに付与されているだけでなく、自分で投稿することもできたことから、コミュニケーション用途に活用することも可能であった。
従来のARは、基本的に「マーカー」と呼ばれる専用の画像データを印刷するなどして設置し、それをアプリ側が認識することで、オブジェクトを表示する仕組みとなっていた。だがセカイカメラはGPSやジャイロセンサーなどを用い、マーカー不要でARを体験できることから評判となり、類似するアプリも多く現れた。しかも当時はスマートフォンやアプリが大きなブームとなっていたことから、ARはスマートフォンで未来を体験できる技術として、大きな盛り上がりを見せることとなったのである。
しかしながら当初こそ高い関心を集めたARだったが、ソフト・ハード共に技術面でまだ発展途上だったこともあって表現がリアリティに欠け、物珍しさ以上の価値を提供することができなかった。それゆえARが定着したのはゲームなどの娯楽やプロモーションなどの分野に限られ、セカイカメラが2014年には全てのサービスを終了するなど、ブームは急速に鎮静化してしまったのである。