成長事業の重点化では、「自社の強みを再定義し、絞り込んだ上で、その強みに立脚して成長する」とし、「オフィスにおいては、全世界130万社、MIFでは400万台の実績が強みであり、これをプラットフォームと考え、その上に、ワークフローソリューションを提供する。経費精算や議事録作成を簡単に行えるソリューションなどを提供し、ワークフローのデジタル化を進める。一方で、プリンティング技術の強みを生かして、オフセットからデジタルへの移行を進める商用印刷、作像システムや産業プリンタにおいてIJ技術を生かす産業印刷、高速印字プロセス技術に強みを持つサーマルレーザープリンティングに力を注ぐ。事業体制についても、事業の軸を強化し、成長分野に重点投資する」などとした。
経営システム強化については、「これまでリコーは、ステークホルダーに約束したことを守ってきていない。理由はいろいろあるが、実行力に問題があったのは事実だ。いまは、結果につながる責任体制が必要である。私が直接、推進、管理する体制とし、トップダウンでの改革の断行を進める。また、体制の見直しにより、事業軸でのPDCA管理と結果責任の徹底も図りたい」とした。
リスクに対するリバイバルプランを策定
中期経営計画の見通し前提も、これまでとの違いを感じることができる。
「これまでの改善努力を続けただけでは、2019年度には、約500億円規模の赤字になるというリスクシナリオを想定し、そこからリバイバルプランを策定した」(山下社長)というのが基本姿勢だ。
「オフィスのマシン売価およびアフター売価の下落が継続するほか、商用印刷での企業内印刷の減少などがリスク要素になる」と語る。
実は、昨年、為替影響によって、海外向け製品は値上げを行い、それを最終価格に転嫁した。「転嫁できたのは30~40%の顧客に留まった。だが、見方を変えれば、30~40%の顧客はそれを受け入れてくれた。出来たことを増やしていくということが必要である」と、山下社長は語る。
リスクをチャンスにつなげるという発想も、山下社長体制における基本姿勢になりそうだ。
山下社長は、さらに中期的に目指すリコーの姿についても言及し、新たなバリュープロポジションメッセージとして、「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」を掲げることを発表した。
「これまでのオフィスを対象にしたビジネスから、現場(ワークプレイス)に対するビジネスを新たな成長機会と捉え、モノ+コトだけでなく、そこにアナリティクスを加えていく。人に焦点を当て、個人、組織に活力を与えたい」とした。
リコーが新体制で挑む中期経営計画は、常識や前例にとらわれず、リコーの体質を抜本的に変えるものになる。そして、山下社長は実行力と結果にこだわる姿勢を示した。そして、2017年度中には、その成果を見せたいと意気込む。山下社長が宣言するようにスピード感を持った改革ができるかどうかが注目される。
なお、同社では、2018年4月には、未来の方向を示す長期ビジョンを発表する予定だという。